高崎健康福祉大高崎(群馬)の背番号12、金井俐樹捕手(3年)は優勝の瞬間、こぶしを突き上げた。

珍しいことではない。三塁ベースコーチを務める。仲間が安打を打った時、走者が生還した時。いつも両腕を突き上げている。

スタンドを見ながら突き上げるシーンも多かった。

「ベンチを一番見てるんですけど、見ている人からしたらスタンドを見ているように見えてるのかなと」

思いもある。

「勝手にスタンドの人たちを巻き込む…巻き込むっていう言い方おかしいですけど、仲間のプレーや自分の行動で、何かを伝えたいので。スタンドの人たちも一緒に巻き込んでいけたら良いなっていうふうに思ってて。だから無意識にスタンドを見てるかもしれませんね」

箱山という絶対的な正捕手がいる。箱山が入学してくると分かっていても、健大高崎を選んだ。中学時代は金井もそれなりに名の知れた捕手だったが、箱山はやっぱりすごかった。

「中学での自信が高校に来て、箱山に取られて。一番下に落ちたというか、挫折を味わったのはあります」

それでも「絶対勝てないと思ったことは一度もないです」と食らいつき、チームのために動いてきた。

ずっと任せっぱなしじゃいられない。

「箱山がここまで本当にやってきてくれて、春はもう自分がやんなきゃいけないので。春の県大会は箱山に負担かけずに戦いたいと思ってます。優勝してホッとした気持ちと、春は絶対自分がやってやるっていう気持ちです」

こういう選手がいることも、優勝校の強さだ。【金子真仁】

 

◆高崎健康福祉大高崎 1968年(昭43)創立の私立校。01年共学となり現校名に。野球部は02年創部。甲子園出場は今回で春7度目(夏は3度)。部訓は「不如人和」(人の和はすべてに勝る)。主なOBは長坂拳弥(阪神)柘植世那(西武)湯浅大(巨人)清水叶人(広島)ら。学校所在地は、群馬県高崎市中大類町531。