<高校野球宮城大会:仙台商5-1仙台育英>◇23日◇準々決勝

 仙台商が昨夏甲子園16強の仙台育英を破った。身長167センチの左腕エース米将吾(2年)が5安打1失点で完投勝利。30年以上野球部を応援してきた同校教諭の村山道雄さん(享年60)が今月1日、定年を年度末に控え、亡くなった。下原俊介監督(40)が「恩師のために」とチーム一丸、金星を挙げた。

 米が小さな巨人になった。甲子園常連の仙台育英に勝った。最後の打者を遊飛に打ち取った瞬間、童顔をくしゃくしゃにし雄たけびを上げた。「育英を倒した実感がない」と言うが、許したのはわずか5安打。直球と、スライダー、スクリューを中心とした5種類の変化球で強力打線に的を絞らせなかった。

 冷静さを失わなかった。最終回。仙台育英の主将、3番吉田聖哉(3年)からの好打順にも動じない。9球粘られたが、表情を変えることなく最後は右飛に打ち取った。最終打者を打ち取るまで顔が緩むことはなかった。1回戦から5試合連投し完封、完投勝利ともに2度。167センチながら体を大きく使うフォームは、この日の朝も鏡や窓の前でチェックしてきた。3回戦で仙台育英に敗れた泉松陵で二塁手を務める双子の兄恭太からも「勝ってくれ」とエールをもらった。米の好投に6回1死一、二塁、4番の菅田直幸三塁手(3年)が応え、右中間に決勝2点打を放った。

 負けられない理由がある。今月1日、83年に甲子園に出場した際の野球部副部長だった村山道雄さんが病死。下原監督は「30年以上も野球部を応援してくれた」と恩師のために戦った。大会前、お見舞いに訪れ「夏の大会がもう少しで始まります」と報告。言葉はなかったが反応してくれたという。1回戦からチームは遺影と、毎試合の結果を記したボールとともに戦ってきた。そしてこの日、仙台育英からの金星も記された。

 4年ぶり21度目の4強。甲子園出場は村山さんが行った83年以来、1度もない。是が非でもあと2勝-。村山さんのボールに甲子園の記録も記したいから。【三須一紀】