<高校野球西東京大会:小平西14-4五商>◇7日◇1回戦◇神宮

 高校野球の地方大会は7日、18都府県で開幕し、全国で球児の夏が本格的に始まった。西東京の開幕戦では小平西が五商に5回コールド勝ち。4回からマウンドに上がった西沢龍之助内野手(3年)が2回を4奪三振無失点と好救援し、流れを引き寄せた。高校2年で転校した苦労人が、最初で最後の夏に輝いた。

 雨が降る中、西沢は慎重にマウンドに向かった。丁寧に投げても、変化球がすっぽ抜ける。「持ち味の直球でガンガン押していこう」と開き直った。4回の先頭打者を三振に打ち取ると、1四球だけで2回無安打4奪三振。4、5回の打線爆発へ呼び水となった。打撃でも3回までに適時二塁打を含む2安打を放ち、主砲の仕事を果たした。

 最初で最後の夏に懸ける思いは強い。東京・清瀬市で生まれ育ち、中学時代は東久留米シニアで内野手として西東京選抜に入る活躍。台湾遠征も経験した。当然のように甲子園を目指し、千葉県の強豪私学に越境入学した。しかし、チームの雰囲気になじめなかった。寮の閉鎖も重なり、2年生の初めに地元に近い公立の小平西に転校。1年間は規定で公式戦に出場できず、練習試合だけで4番を打っていた。

 転校当初は公式戦に出場できず、集中力を欠いて朝練に遅刻することもあった。それでも「仲の良いチームで溶け込みやすかった」という仲間の友情に、心は徐々に前向きになっていった。スタンド観戦した今春は都大会に進めず、小平西での公式戦出場は夏だけに。チームメートの「本番(夏)でできるから頑張っていこう」との言葉が支えだった。

 大勝発進で勢いをつけた。「みんな普段通りの野球ができた。日鶴(日大鶴ケ丘)にも勝ちたい」と第1シードにも気後れはない。「転校して良かった」と話す苦労人は活躍を続け、1年間練習に打ち込んできた成果を見せる。【斎藤直樹】