<センバツ高校野球:山形中央6-2岩国商>◇27日◇2回戦

 東北勢が、史上初の4校初戦突破を決めた。大トリで登場した「東北絆枠」の山形中央が、岩国商(山口)を破った。先発の高橋凌平投手(3年)、2番手高橋和希投手(2年)から、大会直前に右目下打撲で離脱したエース石川直也投手(2年)につなぐ「絆リレー」に打線も11安打で応えた。

 スクイズで1点を先制された5回。攻撃に入る際に松沢昇太主将(3年)がナインを鼓舞した。「声出していこう。想定内じゃないか。ねっつけ」。東北弁で粘り強く。その言葉に応えるように打線が奮起した。

 連打で無死一、二塁のチャンスをつくると、2番手で登板した高橋和が右中間に運び、一気に逆転。庄司秀幸監督(36)は「苦しい場面をともに乗り越え、試合の中で絆を感じられた」と、粘り強く戦い抜いた選手の踏ん張りを褒めたたえた。

 21世紀枠で出場した10年以来3年ぶりのセンバツ。東北地区で8強も、老人宅の雪かきなどの地域ボランティアに励み、あいさつや掃除など日常生活から一生懸命に取り組む姿勢が評価され「東北絆枠」代表に選ばれた。絆とは何か。出場する意味を数カ月間、考え続けた。東北の沿岸地に比べ山形は被害は少なく、「被災地のために」とは軽々しく言えなかった。たどり着いたのは「勝つこと。それが自分たちの答え」(松沢主将)。積雪で出来なかった分、今年に入ってから遠征先でひたすら土の上のノックで守備を磨いてきた。

 「絆の継投」もあった。19日、エース石川が練習試合中にフライを追いぶつかり、右目下を負傷。目は腫れあがり、3日間の入院。3キロ体重が減り、登板は絶望的だった。だが驚異的な回復で試合前日に打撃投手を務めるまでになった。この日は先発高橋凌、高橋和に続き9回からマウンドへ。本調子には遠かったが石川は「2人が粘り強く投げてくれた。気持ちで投げた」。高橋凌は「石川をマウンドに上げられて良かった」と笑顔を見せた。

 これで東北勢5校のうち、4校が初戦を突破。庄司監督は「心強い。チーム東北という感じ」。東北と、仲間と強めた絆を胸に、全力で浦和学院(埼玉)にぶつかっていく。【高場泉穂】