<高校野球北北海道大会:帯広大谷4-3旭川南>◇19日◇決勝◇旭川スタルヒン

 49年ぶりの悲願はかなわず-。旭川南は帯広大谷に逆転負けし、甲子園出場はならなかった。4回まで3点を先行したが、追いつかれる展開。同点の8回裏1死満塁から、エースで4番、そして主将の辻本響(3年)が決勝の押し出し死球を与えて夢はついえた。地区予選から6試合すべて1人でマウンドを守り、794球を投げ抜いた大黒柱は「悔いはないです」と涙を流した。

 渾身の1球だった。悔いはない。8回裏1死満塁。辻本が、今夏の792球目を投げ込んだ。「弱気になったら負ける。強気で攻めていこう」。内角を狙った直球は、相手打者の右ふくらはぎに直撃した。決勝の押し出し死球。信じがたい現実を、マウンドでかみしめた。「思いきり、自分の中で勝負できた。悔いはないです」。地区予選から全6試合を1人で投げきったエースは、気丈に話した。

 49年ぶりの夢を託された大黒柱だった。主将を務め、打線では4番を任された。キャプテンに指名した小池啓之監督(61)は「裏表のない、まじめ一辺倒。融通が利かないところもあるけどね」。163センチと小柄だが主軸に据えた。新チーム発足時は外野手だったが、昨年の秋季大会後に転向させた。「ピッチャーにふさわしいボールを投げる」(小池監督)。この夏を見据え、辻本と心中する覚悟だった。

 3つの大役を与えられた辻本は「小池先生に言われたら、責任を持ってやろうと」と、有言実行した。練習でも全力疾走は怠らなかった。自ら率先することで、チームメートにも行動で示し続けた。「最後になって、まとまってこれた。本当に最高のチームです」。ゲームセットの瞬間は、ネクストバッターズサークルで迎えた。涙があふれても、主将としてりりしかった。泣きじゃくる仲間を最後まで引っぱり続けた姿は、かっこよかった。【木下大輔】