<高校野球新潟大会:新潟7-2新津南>◇10日◇1回戦◇ハードオフ新潟

 第96回全国高校野球選手権(8月9日開幕・甲子園)新潟大会が10日、ハードオフ新潟で開幕した。開幕試合は新潟が14安打の猛攻を見せ、新津南を撃破し2年ぶりの夏1勝を挙げた。西武やロッテなどでコーチを歴任した広野功氏(70)が3月から臨時打撃コーチを務めており、その指導を生かした。新潟は2回戦で第1シードの日本文理と対戦する。

 県有数の進学校・新潟が打撃開眼で2年ぶりの夏1勝だ。3-1で迎えた7回。2死二塁から4番阿部陸内野手(3年)が左越えに二塁打を放つと、吉沢諒捕手(3年)番場悠太郎内野手(3年)も続く。3連続適時打で3点を奪い、新津南を突き放した。春の県大会では2試合で3点しか取れなかった打線が14安打7得点。後藤桂太監督(47)は「まさに広野効果。今まで教わった内容がすべて出た」と振り返った。

 転機は3月だ。学生野球資格を回復した広野功氏とパイプがあった同校OB会の協力もあり、草間俊之校長が依頼する形で、臨時打撃コーチが実現した。大会前まで計5回実施された。3月には広野コーチの打撃講座を3時間受け続けた。その後、部員全42人にトスバッティングを上げてもらい、各選手のスイングをチェックしてもらった。

 「広野塾」で一番成長したのが主将の吉沢だ。この日2安打1打点でチームを勝利に導いた吉沢は「目線を水平にして打て、とシンプルで分かりやすかった。みんなの打撃が良くなった」と日に日に手応えをつかんでいった。手首の返しがよくなり、体重移動がスムーズになることで、飛距離が増した。

 この日開幕式の司会を務めた女子マネジャー、石川広華さん(3年)のアシストも大きかった。石川さんは広野氏の指導内容を尽きっきりでメモし、翌日には練習グラウンドに張り出して、指導の徹底を図った。勝利後、涙を見せた石川さんは「広野さんから対策メモをもらっていて、今日のミーティングで確認しました」と笑顔を見せた。

 2回戦では第1シードの日本文理と対戦する。8回に頭部に死球を受けた吉沢主将は、左のこめかみを冷やしながら力強く言った。「文理と対戦することで、後輩にいい経験をさせてあげたい」。進化した打撃を武器に、横綱に挑戦する。【高橋洋平】

 ◆広野功(ひろの・いさお)1943年(昭18)10月16日生まれ。徳島県出身。徳島商では2年春夏に甲子園出場。慶大を経て65年ドラフト3位で中日入団。西鉄-巨人-中日と移籍し74年引退。プロ野球史上でただ1人、逆転満塁サヨナラ本塁打を2本放った。引退後は中日、西武、ロッテでコーチ、ロッテ、楽天で編成部長を務めた。右投げ左打ち。兄の翼氏は元阪急外野手。