<高校野球千葉大会:拓大紅陵3-1銚子商>◇13日◇2回戦◇ゼットエーボールパーク

 拓大紅陵(千葉)は、今夏限りで退任する小枝守監督(62)のラストサマー初戦で、伝統校の銚子商を破った。

 小枝監督が、初戦屈指の好カードで銚子商を退けて、最後の夏初戦をものにした。先発山岡弘佑投手(3年)が2安打1失点完投。初回スライダーを痛打され、三塁打を浴びたが「高めにいかないよう気を付けろ」とアドバイス。「あの子も苦しんで、いい制球を身に付けました」。丁寧に低めをつき、1四球に抑えた教え子に目を細めた。

 今年3月、制球が安定しない山岡に声をかけた。「社会に出たら結果を出さなければ使ってもらえないんだぞ」。監督のゲキに山岡は「それでも使ってくれる監督のことを思い、心に火が付きました」と、試合後でも走り込みを欠かさぬなど自分を追い込み、この日の好投につなげた。

 今大会限りでの退任を選手に伝えたのは4月。動揺が広がったが、選手に寄り添うスタンスは貫いた。毎朝5時45分、グラウンドに出向き、朝練の様子をうかがった。「やれ、と言うのは簡単。常に見てあげなくては」。監督の変わらぬ態度に、チームも落ち着きを取り戻し「恩返しを」と一丸となって夏を迎えた。

 82年に就任し通算9度の甲子園出場に導いた名将は「伝統校相手にふさわしい好ゲームだった。これで緩まぬように気合を入れたい」。最後は夏12年ぶりの甲子園で締めくくる。【加藤雅敏】