<高校野球埼玉大会:本庄東2-1立教新座>◇19日◇4回戦◇大宮公園

 惑わせたのは相手打線だけではない。本庄東の水野瞭太投手(3年)が左足を大きく上げて、メジャー往年の奪三振王ばりのフォームで投じると、ネット裏の観客もどよめいた。165センチ、58キロのきゃしゃなエースが独特の間で、右横手から繰り出す変化球は、勢いに乗る立教新座を5安打1点と揺さぶった。今大会中に「ライアン」と呼ばれるようになった水野は、「外と内の配球がうまく使えた。スライダーが良かった」と銀ぶちメガネの奥を光らせた。

 最速は130キロにも満たず、「ライアン」級の威圧感はない。むしろ足元がおぼつかなく、時折フォームを崩し、倒れそうになるシーンも珍しくなかった。「趣味が勉強」という水野。これも作戦の1つかと思いきや、「球種によって力が入りすぎるとなるんです。球種?

 それは言えません。良いボールが行ってくれればフォームは気にしません」と笑わせた。

 入学時は内野手で、1年の11月に地肩の強さを買われて投手になった。翌1月から横手投げに変えたが、背番号をもらったのは2年秋からという遅咲き。その時から左足を高く上げるフォームに改造した。田中和彦監督(46)は「賢い子なので信頼しています。春の大会が終わってからさらにタイミングを外す工夫をしている」とほめちぎった。

 延長11回裏、決勝サヨナラ二塁打を放った横田翔内野手(3年)が言う。「水野とは行きも帰りも秩父鉄道で一緒です。頑張っていたので自分も打つしかないと思いました」と興奮気味に話した。

 水野は秩父郡小鹿野町出身で、Bシード春日部共栄の中軸を打つ守屋元気捕手(3年)とは小中学校での野球仲間。互いに勝ち進めば準々決勝で戦うが、「やりたくないです。100%打たれます」と笑った。春は地区代表決定戦で滑川総合に0-7で敗れた本庄東が、大物食いを予感させるには十分な、エースの快投だった。【浅見晶久】

 ◆水野瞭太(みずの・りょうた)1997年(平9)1月14日生まれ、埼玉・秩父郡小鹿野町出身。小鹿野小2年で野球を始め、小鹿野カージナルスジュニアでは主に三塁手。小鹿野中では軟式野球部に所属し三塁手兼投手。165センチ、58キロ。右投げ右打ち。趣味は勉強。家族は両親と弟と妹。