<高校野球北北海道大会:武修館8-5釧路工>◇24日◇決勝◇旭川スタルヒン

 限界だった。釧根地区から1人で投げ続けてきた釧路工の宮脇弘一(3年)が、今大会初めて途中降板した。8回1死満塁で勝利が遠のく2点適時打を許した後、交代を告げられた。マウンドから三塁側ベンチに戻る時に涙がこぼれた。その後もベンチでタオルを握りしめ、悔し涙を拭った。

 3回には熱中症の兆候が出ていた。捕手の返球を捕り損ね、ナインの声が遠くに聞こえた。それでも甲子園のかかった試合。中盤以降、攻守交代の際には「もう1回行くぞ、もう1回」と、自らを鼓舞するようにベンチから飛び出した。

 暑さから思い通りの投球ができず、7回1/3を13安打8失点。「暑いなあと感じて水分補給や冷やしたりはしてました。熱中症は分かりません。ただ、集中力を欠いていたかもしれません」。それでも終盤までマウンドを守ったのはエースとしての使命感だった。上村健太監督(32)は「声をかけても返事がなかったりして変だなと思っていました。限界以上に投げさせてしまった」と言葉を詰まらせた。

 大会に備え、地元でウエートルームにストーブを4カ所で炊き、気温30度以上でトレーニング。北大会の4試合に備えてきた。地区から6試合で650球。最後に力尽きたとはいえ、宮脇がいたからここまでチームは勝ち上がった。【中尾猛】