<センバツ高校野球:日大三3-1向陽>◇28日◇2回戦

 日大三(東京)が21世紀枠で出場した向陽(和歌山)を破り、準優勝した1972年以来38年ぶりの8強進出を決めた。元巨人山崎章弘氏(48)を父に持つエース左腕、山崎福也(さちや)投手(3年)が6安打1失点で2試合連続完投。センバツ通算21勝として、西東京のライバル早実に並び、東京1位タイになった。

 試合後のお立ち台に立った山崎は、52歳の小倉監督から「山ちゃん」と声を掛けられて、タオルを受け取った。ベテラン監督も目尻を下げる明るい人気者。185センチの長身と巨大な手のひらから繰り出すフォーク、スライダーを低めに集め続けた。初戦の山形中央に続き、2試合連続で21世紀枠校を完投で破った。

 向陽は、開星(島根)野々村前監督が「腹を切りたい」発言で、敗戦を悔やんだ相手だ。問題発言翌日の朝食時、小倉監督から事件の説明と、注意が与えられた。山崎は「甲子園に来るチームはみんな強い。21世紀枠は逆に雰囲気がいい。負けないようにと思った」と最後まで集中力を切らさなかった。

 2回に3連打で無死満塁とし、内野ゴロと右前打で2点を先制。初戦に2ランを含む3安打5打点と活躍した6番吉沢は2度バント(1つは内野安打)を行った。相手がどこでも、いつも通りの試合運びで38年ぶりの8強を勝ち取った。

 元巨人捕手の章弘氏を父に持つ山崎は、昨秋から投手に転向した。12月14~28日までは伝統の強化合宿を行った。午前4時起床で、午後10時過ぎまで野球漬けの日々を送る。達成感に浸る最終日は、マウンド付近での解散会で「山ちゃん」も号泣。下半身を鍛え上げ、投球時の歩幅は5歩半から1歩分広がった。

 初戦の翌日はユニバーサルスタジオに出掛けてリフレッシュ。山崎は「大好き」とジェットコースターに5回以上乗った。試合前にはTOKIOのヒット曲を全員で合唱。オンとオフをしっかり切り替え、明るい日大三が71年大会の優勝再現へ快進撃を続ける。【前田祐輔】