<センバツ高校野球:日大三14-9広陵>◇1日◇準決勝

 日大三(東京)が記録的猛打で、71年以来の日本一に王手をかけた。1点ビハインドの8回、代打清水弘毅内野手(2年)が勝ち越し右前2点適時打を放つなど、大会タイとなる25年ぶりの9打数連続安打。打者15人で10点を奪い、広陵(広島)のドラフト候補、有原航平投手(3年)をKOした。9人連続得点も大会タイ。14-9で大勝し、38年ぶりの決勝進出を決めた。

 豪雨の甲子園が「猛打ショー」の舞台になった。幕開けは1点を追う8回、山崎の三塁内野安打だった。犠打、四球で1死一、二塁とし、田んぼのようなグラウンドに、8番根岸がバントを転がした。ぬれたボールで狙い通り有原の悪送球(安打と失策)を誘うと、続く代打清水が右前にはじき返して勝ち越し。7番畔上の中前打まで、9打数連続安打だ。小倉全由監督(52)は「甘いボールを積極的に打つ。それだけです」と単純明快に話した。

 01年夏、当時の大会記録チーム打率4割2分7厘で優勝した強打は健在だった。エース山崎はこの回2安打。大会通算12安打で、センバツ記録まであと1本に迫った。2点先制された直後の1回に同点中前適時打を放つなど4打数4安打。「来たボールを打つだけ」と無心で打席に立つ。決勝打を放った清水は、宿舎のルームメート。清水は01年優勝時のビデオを繰り返し見て日大三に入学した。値千金の一打に「信じられない」と大興奮だ。

 12月末から午前4時起床で行う2週間の強化合宿では、1日2000スイングを目安にする。腱鞘(けんしょう)炎になった選手はテープでバットを手にくくりつけて振り続ける。雨の試合を想定し、完備された室内練習場ではなく、あえて雨中で打撃練習を行うことがある。積み重ねてきた練習が、勝負を分けた一因になった。

 選手たちは都内でも寮生活を送る。各部屋にテレビは禁止で、大部屋では野球中継などだけ見ることが許される。昨秋の都大会は準決勝で帝京に敗れた。この日を境に、午後9時50分の点呼後に再び練習する選手が寮生の約半数の15~16人に増えた。山崎らが午前0時過ぎまで自主練習を行い、センバツ出場を信じた。ストイックな生活で追い込んできた。

 準決勝前夜、小倉監督がミーティングで、その時の思いを振り返った。東京・関東地区6枠目。選手には「全国32枠目」の思いがある。最終枠からの大逆転Vまで、あと1勝だ。【前田祐輔】