高校野球界にも元プロ監督の波が着実に押し寄せてきている。高校野球特集第2回は「プロ出身監督編」。今年4月、藤沢翔陵・川俣浩明監督(37)が神奈川県史上初の元プロ監督として母校監督に就任した。大型投手としてロッテ、阪神に在籍し、引退後の31歳から大学で教員免許を取得した。73年以来2度目の甲子園を目指し、チーム改革に取り組んでいる。大学では今春の東京6大学リーグで慶大・江藤省三監督(68)が就任1季目で優勝するなど、プロ出身監督の躍進がめざましい。甲子園にも元プロ旋風は吹くか。

 田んぼに囲まれた藤沢翔陵グラウンドに、ひときわ大きな声が響く。かつてロッテ、阪神で投手を務めた川俣監督の実技指導だ。神奈川県初のプロ出身監督として4月に就任。「高校在学中からずっと、指導者になりたかったんです」とバットを振る手も力が入る。

 プロ初登板となった97年5月25日、4回から登板し2人目の打者だったイチロー(当時オリックス)に本塁打を打たれている。02年に現役引退後、1度は建築関係の営業職に就いた。母校から監督就任の誘いを受け、1年で退職。04年からは教員免許取得のため、昼は同校の事務職員、夜は神奈川大の学生という二足のわらじを履いた。

 元プロが高校野球を指導するにはさらに、2年間高校で教壇に立つ必要がある。社会科教諭として公民を教えながら、今年3月まで野球部にはかかわれなかった。「外から見るしかできなかったけど、夢のため。6年は苦じゃなかった」。

 念願かなった4月。春季県大会初戦で敗れたチームを、その足で同校に呼び戻し、スタートを切った。練習メニューも一新。「強くないんだから、年中無休で練習だ」と3カ月で休日は1日だけ。家庭では小学生の娘3人のパパだが、家族も全面的に理解を示した。

 大学球界では慶大・江藤監督が就任1年目で東京6大学リーグを制した。「プロアマの垣根があるのは野球だけ。上が下を教えるのは国のためにも子どものためにもいい。続けるべき」とパイオニア精神も持つ。

 初戦は7月14日、横浜と津久井浜の勝者と対戦。いきなり強豪横浜と当たる可能性にも「やってやろう。勝ったらすごいでしょ、神様がチャンスをくれた」と張り切っている。昨夏は3回戦敗退。73年夏以来の甲子園へ、新米監督が2度目の青春をかける。