<高校野球北北海道大会>◇29日◇1回戦◇空知地区予選

 北北海道空知地区では滝川が3-0で滝川工を下した。

 滝川の「鉄男」が、初戦突破に導いた。背番号1の松浦明胤(あきつぐ)投手(3年)が滝川工に8安打されながら、粘投で公式戦初完封。2週間前に右尻の付け根を肉離れし、1回には鼻血のハプニングもあったが、要所を締めた。「上出来です。直球が走っていた」と素直に喜んだ。

 高校入学後、赤平から通っていたが、昨年4月に金融関係に勤める父聖一さん(50)の転勤で千歳に引っ越した。転校などの選択で迷う中、仲間の顔を見て決断。「滝高で最後までやりたい」。母美佳さん(41)は「意思を曲げなかったのは初めてだった」。下宿生活より、列車通学を決心した。

 平日は朝6時4分、千歳駅発の普通列車に乗り、札幌で特急に乗り換え、計16駅、所要時間1時間40分。かなりの移動だが、松浦にとっては少し事情が違う。将来の夢がJRの車掌になることだからだ。鉄道ファンの男女を通称「鉄男」「鉄子」と呼ぶが「それに近いかも」。美佳さんは「十分、鉄男です」と太鼓判を押していた?

 赤平小5年時、函館の祖父母の元へ、列車で1人旅をした。その時、声を掛けてもらい不安を取り除いてくれた車掌が忘れられず、あこがれた。大好きな列車通学を続け心身を鍛え、迎えた最後の夏。「弁当をつくってくれたり大変だった親へ、今日は恩返しになった。次は自分のやってきたことを信じてやるだけ」。30日、強敵駒大岩見沢に挑戦する。【村上秀明】