<高校野球静岡大会>◇25日◇浜松球場◇準決勝

 常葉学園菊川が浜松工を5-2で破り、常葉学園橘との決勝史上初の兄弟校対決が実現した。。打撃不振で4番から6番に下がった桑原凌一塁手(3年)が2安打を放ち、決勝へも弾みをつけた。

 勝利には直接関係ないヒットが、常葉菊川に勢いを与えた。2回、6番桑原の第1打席。打球は中前にはずんだ。高校通算45本塁打。不動の4番も今夏はこの試合までわずか1安打の7分1厘。森下知幸監督(49)が「本当は変えたくなかった」と悩んだ末の決断だったが、リフレッシュ降格は早速効果をみせた。

 ただし、続く3回の打席は好機に凡退。6回は右中間に大飛球が伸びたが、浜松工の好守に阻まれた。やはり何かが違う…。試合の主導権を握っても、重苦しくなるほど、桑原のバットには影響力がある。

 そんな心配事を桑原自ら振り払った。2点リードで迎えた8回、右中間を深々と破った。打ち急ぎが修正され、ボールをよく見た本来の打撃だった。二塁に到達すると、ガッツポーズに両手を広げるグリコポーズでベンチに笑顔を向けた。常葉菊川ベンチが一気に盛り上がる。ダメ押しの5点目のホームは、そのまま桑原が踏んだ。準決勝を突破するだけではない、決勝に向けて何よりのエネルギーが帰ってきた。甲子園に行けるぞ!!

 「正直ほっとしてます」と桑原は肩をなで下ろした。責任、プレッシャーから考え込むこともあった。しかし、チームメートの励ましの言葉に、力を抜いた。「みんなのおかげです。とにかく何も考えずに行けました。ここまで来たら、4番とか、そんなことはどうでもいい。チームの勝利に1つでも多く貢献するだけです」。

 試合前、大好きなMr.Childrenの「ギフト」を聴いた。2年前の甲子園はスタンドからただ見守った、あこがれた夢舞台まであと1つ。復活を待ち続けた仲間に、甲子園切符という最高のギフトを届けたい。ただそれだけのために、バットを振り抜く。【前田和哉】