米大リーグ機構(MLB)と選手会の交渉は5月下旬から数週間、報酬面について焦点が絞られてきた。その間、懸念されるべき新型コロナウイルスの感染予防については、表立ったものはなかった。昨季のワールドシリーズ王者ナショナルズの左腕ドゥーリトルは6月8日、ツイッターで「解決すべき健康面の心配も残っている」とつづった。同投手は米紙デーリー・ニュースの記事を引用し、問題点を指摘している。

同紙はMLBが5月中旬に選手会に提示した感染予防マニュアルに関して、不十分な点を明らかにした。MLBは「(30球団)それぞれが既に、地域の自治体と連絡をとっている」という主張をしていたが、6月7日付の同紙の報道によれば、各チームの拠点がある28の市や地域に確認をとったところ、6月2日までにMLBや球団から連絡があったのは、わずか5地域だったことが判明。実際にマニュアルを受け取ったのは4地域だったという。

また、ペンシルベニア州フィラデルフィアの地元紙は6月13日、複数の州で感染者数が急増していることを伝えている。アリゾナ州、テキサス州、フロリダ州が該当し、3州には5球団が集まっている。また、5月は1日2000人前後の感染者数だったカリフォルニア州でも、6月に入って1日3000人前後となる日が続くなど、やや増加傾向となっている。

MLBが作成した67ページに及ぶ感染マニュアルの原案には、球場内外での行動制限や禁止事項などが詳細に示されたが、週に複数回のウイルス検査については、頻度を上げるように選手会から改善を求められていた。交渉で報酬面での溝は埋まらなかったが、安全面については選手だけでなく、選手の家族や球団、球場スタッフなど多くの人が関わってくる。メジャー開幕となるまでに、少なくとも安心してプレーできる環境は整えてもらいたい。