ドジャースが、ワールドシリーズ(WS)第7戦でアストロズに敗れ、あと1歩及ばず、29年ぶりの世界一を逃しました。アストロズにすれば、球団創設56年目で初のWS制覇となりましたが、それほど世界一への道は険しいものです。

 WSで2試合に先発しながら、いずれも本来の力を出し切れずに敗れたダルビッシュ有投手(31)は、敗戦後、悔しさと同時に、素直な思いも口にしました。

 「メジャーに来てから、正直な話、野球への情熱が段々落ちてきてしまってるのがあって、それにすごく悩んでいて、特に3年ぐらいは。ここで目標を持たせてもらったというか、今、WSに出て活躍したいという目標になりました」。

 ポストシーズンが近づく時期、開幕時に限らず、メジャーでプレーする選手であれば、誰もが常に「ワールドシリーズで勝つこと」を目標として掲げます。ただ、このフレーズは、いわば「決まり文句」のようなもので、各選手の思いの強さまでは、なかなか計れません。というのも、いくらテレビなどで見たとしても、あくまで目標や夢に近いもので、本当に実感するには、やはり実際の舞台に立つしかありません。

 不慣れな救援役を務めながら大活躍した前田健太投手(29)にしても、試合後は、悔しさをかみしめるように言いました。

 「本当にいい経験をさせてもらいました。こうやってワールドシリーズの舞台に立ったということは、すごく野球選手としては幸せだったと思います。今までに感じたことのない緊張感、プレッシャーの中で野球をすることができて、これがワールドシリーズなんだというのを肌で感じることができました。この経験を来年以降に生かしていけるようにやっていけたらいいなと思います」。

 ダルビッシュにしても、前田にしても、日本球界で数々の実績を残し、国際舞台の経験も豊富な超一流選手です。そんな2人でさえ、大きく心を動かされるのが、WSなのです。

 残念ながら、今季の2人は頂点に届かず、シーズンを終えました。その一方で、世界一をつかむまでの険しさも実感したはずです。来季以降、2人が掲げる目標には、これまで以上に強い思いと重みが加わるに違いありません。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)