試合時間の短縮を推進するMLB機構が、今季から新たなルールを導入することを発表しました。オフ期間に話題を集めた、投手の投球間隔を限定する「20秒ルール」は、選手会の猛烈な反対に遭い、棚上げとなりましたが、新ルールでは1試合に監督、コーチ、選手がマウンドへ行く回数を制限。9回までは投手交代でない限り、6度以内と定められました。もし、7度目が起こりそうになった場合は、審判が忠告することになっています。

 その一方で、今回のルール変更には、選手からは戸惑いの声が上がっています。ドジャース前田健太投手は、投手としての立場だけでなく、チーム全体の雰囲気、試合の流れに影響が出ることを心配しています。

 「投手よりも野手が難しくなると思います。簡単に行けなくなると思うので。投手もサインを変える時とか確認できなくなると思うので、しっかりサインプレーとか理解しなくちゃいけないと思います」。

 カブスのダルビッシュ有投手は、メジャー球界に定着している、過剰なまでの「情報戦」と試合時間の関連性を指摘しています。

 「サインの交換もあるし、今は二塁走者が(バッテリー間のサインを)見てくるので、そういう意味でどんどん試合時間はそこで長くなってしまう。投手の間というよりも、サイン盗みとかもあるんだろうなと思います」。

 相手チームのサインを伝達することに関して、現時点で厳密な禁止規定は定められていません。ただ、昨年、ヤンキースとレッドソックスの両チームが、最新機器を使って敵のサインを伝達していたことが判明しました。その後、両球団には一定の金額をチャリティーとして寄付することが課せられるなど、ある程度の「モラル」は存在しています。もっとも、「必要悪」のように解釈されているサイン盗みが、今後も一掃される可能性は極めて低く、そう簡単に時間短縮が実現するとも思えません。昨季のワールドシリーズで、球種がバレていたため、早期KOされたと言われるダルビッシュの言葉には、実感がこもっていました。

 「なんで試合時間を短くするのにこだわるのかなとは思います。投手にそういう(制限する)ルールを取り入れたところで、サインを変えなきゃいけない。どのチームも把握しいてる状態で、いたちごっこみたいなことになる。サインを盗まれて投げたくもないですし、やっぱり時間はかかっちゃいますね。でも、毎年こうやって議論するのも野球なので、いいんじゃないかと思います」。

 今回の「時短」の是非はともかく、ルールを変更したり、新設することに、賛否両論あるのは当然でしょう。ただ、球界の発展を願い、ファン目線に寄り添った議論が、常に活発に行われることは、少なくとも「事なかれ主義」よりも、プラスを生むような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)