<レッドソックス11-6エンゼルス>◇6日(日本時間7日)◇フェンウェイパーク

 【ボストン(米マサチューセッツ州)=四竈衛、大塚仁】レッドソックス松坂大輔投手(29)が、苦しみながらも2010年初勝利を挙げた。今季2試合目の先発となったエンゼルス戦で、初回に3四球などで4点を失ったが、その後は踏ん張った。味方打線の援護で逆転に成功し、5回1/3を5安打5失点で勝利投手となった。

 不本意な投球内容は、初勝利の結果で紛らわすしかなかった。試合後、記者会見場に姿を見せた松坂は、硬い表情を崩すことなく言った。「チームが勝って良かったと思います」。沈んだトーンの第一声は、およそ勝利投手の言葉とはかけ離れていた。

 1日の今季初登板では、5回に突然崩れた。それがこの日は、立ち上がりにつまずいた。連続四球と中前打で先制点を許した。1死後には松井を歩かせ、併殺崩れで2点目。さらに、2点適時打を浴びた結果、3つ目のアウトを取るまで実に39球を費やした。「(試合前の)ブルペンとマウンドで投げた感じが違った。自分の中であれっと思った。早く修正しようと思ったが、できませんでした」。

 松坂自身、「投げている球は悪くない」と言うように、速球は最速94マイル(約151キロ)を計測。その一方で、常に高い理想を求める姿勢に、エアポケットが隠されていた。2ストライクと追い込んでも、繊細にコーナーを狙い過ぎた結果、四球を出す悪循環。プレートに足をかけたまま、捕手マルティネスのサインを待つ時間が長く、テンポの悪いまま、投げ急ぐ間に失点を重ねた。「初回はいろいろと考えすぎました」。

 乱調が続けば、次回の先発機会すら危うくなるような状況だった。だが、松坂は自ら邪念を振り切った。「余計なことは考えず、サインに従って投げようと思った。技術面よりもメンタル面で切り替えました」。抜け気味だったチェンジアップを捨て、最も制球できたカットボールを軸に、シンプルかつ大胆に攻めた。その姿勢が、2回以降の好投に表れた。

 故障者リスト入りした09年7月以降、左足を高く上げる下半身主導のフォームに修正。今春キャンプで出遅れた後には独自のビデオ映像で肩周辺の動作を分析し、肩甲骨を動かす意識を変えた。強い上半身に頼りがちだったが、ヒジを前に押し出すことで速球の伸びも増した。試合前には、ヘッドホンで雑音を遮断し、入手したばかりの「iPad」で音楽を聴きながら集中力を高めた。準備にぬかりはないはずだった。

 現時点で、体調、技術に不安はない。だからこそ、過去2戦の内容は不満だらけだった。3月に生まれた第3子出産後初のウイニングボールにも、まったく興味は示さなかった。「先発なので白星が付いたのは素直に喜びたい。でも、喜んでいられる内容じゃないですね」。今季初勝利に、レ軍は4連勝で開幕戦以来となる貯金1。それでも笑顔を見せないのが、松坂の危機感の表れだった。【四竈衛】