<フィリーズ0-5レッドソックス>◇22日(日本時間23日)◇シチズンズバンクパーク

 【フィラデルフイア(米ペンシルベニア州)=四竈衛】レッドソックス松坂大輔投手(29)が、ノーヒッターまで「あと4人」の快投で今季3勝目(1敗)を挙げた。最速95マイル(約153キロ)の速球と縦のスライダーを軸に、8回2死で8番カストロに初安打を許すまで無安打無得点投球を続けた。5点リードもあり、9回に代打を送られてメジャー初完封も逃したが、1安打無失点4四球5奪三振と気迫十分の112球だった。

 一瞬だけ、悔しそうな顔をのぞかせても、松坂は納得していた。大記録まで「あと4人」と迫った8回2死。フ軍の8番カストロに対し、内角速球でバットを折りながら、打球は遊撃手スクタロが差し出すグラブの数センチ先を越えた。「残念でしたが、特に引きずることなく(その後に)集中できました」。8回1安打無失点。ベンチへ戻り、フランコナ監督にねぎらいの握手を求められると、素直に右手で握り返した。

 達成ムードは十分だった。1回1死一塁を併殺で切り抜けると、その後は味方内野陣が好守でサポートした。外野への打球はフェンス際で失速し、7回には痛烈なライナーを自らのグラブで捕球した。「甘い球もありましたが、球に力はあった方だと思う。どこかで気を抜いて投げるタイプなので打たれると思っていましたが、いい当たりが正面を突いたり、こういう時は(記録を)できるのかと思ってましたが、やっぱりできなかったですね」。

 首痛などで出遅れた今季は、開幕を故障者リストで迎えた。復帰後は、力強さを見せる一方で、4試合中3試合で1イニング4失点以上の乱調で崩れるなど、「もろ刃の剣」のような投球だった。「あまりにも極端過ぎた。でも、僕はいい投球でも悪くても引きずらないですから」。過去4試合で横に曲がりすぎたスライダーではなく、この日はカーブのような縦回転のスライダーを多投。カットボールの曲がりを制御し、軸となる最速153キロの速球を生かした。

 初回に5失点したヤンキース戦の翌18日、テンポや呼吸に問題があると指摘されたマルティネス捕手と話し合いを行った。その際、ツーシームが、無意識のうちにシンカー気味に沈む傾向を助言された。本来は縦に振り下ろすはずの右腕が、悪い時の習性の横回転になっていたのが、その原因だった。理想とするのは、しなやかさを兼ね備えた力強さ。「ひと言で修正ポイントが分かりました」。この日は同捕手が休養日で、バリテックとのコンビで再び好結果を残したが、マルティネスに対する感謝の言葉も忘れなかった。

 ナ・リーグ前年覇者で、今季もリーグ最高打率を誇る強力打線相手に、打者有利と言われる狭い敵地で快投。「特別にいい状態ではないですが、最低限、これぐらいの状態は維持していきたいですね」。松坂が求めてきたのは、目先の結果だけではない。大記録を逃した悔しさ以上に、今後の指針となる投球スタイルに近づけたことが、最大の収穫だった。