日本ハムが攻守に精彩を欠いて、後半戦黒星スタートとなった。失点にはつながらなかったが、6回1死一塁、飛球をつかんだ左翼西川遥輝内野手(23)がアウトカウントを間違え、スタンドに投げ入れる凡ミス。9回は渡辺諒内野手(20)が適時失策を犯した。打線は楽天則本から西川の本塁打で奪った1点のみ。首位ソフトバンクと4ゲーム差に広がった。

 怒りを通り越していた。思い通りに進まなかった後半戦初戦の試合後。栗山英樹監督(54)は表情を変えることなく、言い切った。「本人が1番、分かっていると思う。オレが、そんなことを言う問題の問題ではないから」。怒気を抑えた柔らかな口調だった。言及はしなかった思わぬプレーが、完敗の伏線となってしまった。

 6回の守備だった。1死一塁の場面。楽天サンチェスの打球は左翼の、ほぼ定位置を襲った。西川が落ち着いて捕球。2死となったが若きスピードスターはクルリと反転した。勢いに任せて、日本ハム・ファンが陣取る左翼席へボールを放り込んだ。アウトカウントを勘違いしたミス(記録は失策)。野球規則で一塁走者に2つの進塁を許した。西川は「完全な不注意。準備不足。あんなプレーをしているようじゃ、試合に出る価値がない」と、失点にはつながらなかったが厳しく自らを責めた。

 9回には途中出場で、この日から再昇格した渡辺が適時失策。若手が陥ったミスの連鎖にも栗山監督は先を見据えて、じっと我慢した。「若手選手に関しては(ミスが)大きな前に進む要因になると信じる」。7回以降も左翼で起用され続けた西川は、8回に右翼席へ4号ソロを放った。「塁に出ることだけ考えて、何が何でもという気持ちだった」(西川)。若いチームだからこそ、失敗を糧に前進する姿を期待する。勝利につながらなくても、指揮官の思いに応えた一振りが、希望の光だ。

 後半戦は黒星スタートとなった。悔しさを飲み込み、栗山監督は言った。「本当は、きちっとやらなきゃいけないけど、あれ(ミス)を生かしてくれると思う」。ペナントレースは残り60試合。ここから佳境を迎える。首位ソフトバンクとは4ゲーム差に開いたが、下を向く暇はない。後半戦最初のつまずきを反省し、再追撃の起点にする。【木下大輔】