巨人菅野智之投手(25)が、マエケンとの今季4度目の対決を粘り腰で制した。0-0の9回、味方が広島前田から2点の勝ち越しに成功。9回裏1死で会沢に1発を浴びるなどで降板したが、8勝目を手にした。監督推薦で出場した球宴では、広島黒田から「クオリティースタートが大事」との“金言”を授かった。男気(おとこぎ)アドバイスを胸に、自身の後半戦を白星でスタートさせ、チームの連敗も2でストップさせた。

 ヒーローインタビューに呼ばれ、菅野は思わず苦笑いした。完封目前の9回1死で会沢にソロ本塁打を浴びるなどして、途中降板を告げられた。悔しさをかみ殺してベンチに戻っただけに、第一声では「複雑です…」と本音が漏れた。それでも9回途中1失点でマエケンに投げ勝ち、チームの連敗を止めた。「最後まで投げきれなかったのは悔しいけど、勝ったことはうれしい」と、声を弾ませた。

 勝ちだけを求めた。「最も意識する投手」と尊敬する前田との投げ合いは、今季4度目。過去3回は「1点もやらない」との強い気持ちで、2勝1敗と勝ち越していた。今回は違った。「チームがこういう状態なので、勝つことを優先的に考えていました」と、チームの勝利に徹していた。

 球界が誇る“レジェンド”の言葉が胸にあった。今年の球宴で、広島黒田と初めて言葉を交わした。優しく声を掛けてもらうと、約30分間、メジャー時代の調整法やコンディショニングなど、敵チームの投手にもかかわらず、貴重な話を語ってくれた。「今後の野球人生にすごく生きてくる助言をいただきました」と、言葉に聞き入った。

 今すぐに生かせる言葉も、心に響いた。「勝ち負けはいろんなものに左右される。大事なのはクオリティースタート(QS=投球回6回以上で自責点3以下)。そこを大事にした方がいいんじゃないかな」。チームの勝利のためにすべきことが、より明確になった。

 だからこそ、状況に応じて粘り強く投げた。6回まで毎回安打を許すも、丁寧にコーナーを突き続けた。7回2死二塁のピンチでは、丸に「勝負どころだと思った」と146キロ直球で空振り三振に仕留めた。今季最多の135球を要してつかんだ8勝目。「1点で抑えて自信になる。この勝利はただの勝利じゃなく、(チームが)波に乗れる1勝と思います」。菅野が、巨人を混戦から引き上げていく手応えを得た。【浜本卓也】

<菅野と前田の今季対戦>

 ◆4月9日 広島が1番に菅野キラーの安部をシーズン初起用すると、1回に先制のホームを踏むなど3安打と大当たり。この1点を前田-中崎-ヒースとつないだ広島が守りきり、1-0で勝利。

 ◆4月22日 地方球場(宇都宮)で初対決。巨人が1回に坂本の適時打で先制した。両先発ともに好投し、失点はこの1点だけ。巨人は9回から沢村につないで逃げ切り。巨人は前回とは逆の「スミ1返し」で1-0の勝利。

 ◆5月12日 広島が6回にロサリオの適時打で先制。巨人は7回、移籍後初出場となった堂上の同点打と前田の暴投で2点を奪い逆転した。巨人は菅野からマシソン-沢村へ継投し2-1で勝利。