若きエースが復調の兆したっぷりだ。先発した阪神藤浪晋太郎投手(22)が、7回3安打1失点。フォーム修正も奏功し、好調だったDeNA打線を封じた。勝ち投手にはなれなかったが、チームの連敗を止める力投だった。

 背番号19が勝利をたぐり寄せた。9回を投げ切ったわけではない。白星を手にしたわけでもない。だが、その表情はいつもに比べて晴れやかだった。伸び上がるようなストレート。コントロールされた変化球は、間違いなく今季一番。若きエースに久しぶりの笑顔が戻った。

 「全体的にバランスが良かったので、思い通りの球が多く投げることができた」

 先制点は不運な形で奪われた。2回。1死から7番山下幸に右前のポテンヒットを許すと、盗塁を刺そうとした原口の送球をベースカバーの鳥谷がポロリ。続く8番戸柱の打球を一塁手ゴメスが飛びつくもグラブではじき、1点が入った。ただ、その後はゼロ行進。3安打を許したが、まともに浴びたヒットは7回山下幸の左前打だけだった。

 10日間で変身した。当初登板予定だった10日巨人戦が雨で流れ、中9日と登板間隔が空いた。自身3試合白星から遠ざかり、同2連敗中で、この日を迎えていた。この期間に思い切った投球フォーム改造に着手。左足を上げる際に体が前かがみになる癖を修正した。金村投手コーチらとキャッチボールを繰り返し「猫背」だった背中に「軸」を作ることを意識した。

 ただ、不変な点もある。8日の「母の日」が近づくとサプライズで実家にリラックスウエアを郵送。母明美さんを喜ばせた。仕事で悩んでいても家族思いの性格は変わらなかった。

 金本監督もエース対決を制し、連敗をストップさせた右腕を絶賛。「素人目にも、やっぱりテークバックというの? 足を上げたときの上体の安定感がすごく感じてね」とベタ褒めだ。次戦は中5日で19日中日戦(甲子園)に向かう。笑顔が戻った藤浪に、次こそは白星が付いてくる。【桝井聡】