中日荒木雅博内野手(39)が通算2000安打を達成した。打撃が苦手な男がなぜ名球会入りできたのか。「心・技・体」の3回にわたって秘密に迫る。第2回の今日は「技」。

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 技術を語らせたら荒木は冗舌だ。「野球少年に上達の秘訣(ひけつ)を」と問われ「生活のすべてを野球に関連づけること。自分で考えること。考える力をつければ、うまくなる」と答えた。

 入団後、本塁打王の大豊泰昭に仰天した。「新幹線のホームで、入ってくる車両をボールに見立ててタイミングをとっていた。ドライヤーをかけながら1本足打法の形をやっていた」。

 2軍時代から相手データを徹底分析。ノートには投手だけでなく捕手の特徴まで書き込んだ。1軍で盗塁を期待されるようになってからは投手のクセが見つかるまでビデオをすり切れるほど見た。中日は相手のシートノックを野手全員で見る。荒木は今も、個々の体調まで見ている。

 足首の関節が人より柔らかいため、予備動作なしに帰塁も、スタートも切れる。身体的な特性をとことん生かした。企業秘密で詳しくは語らないが、打席で感じた投手のクセを盗塁に生かしているという。

 08年北京五輪の準決勝韓国戦。7回に一、二塁間を抜かれ同点にされた。シフトをとろうか迷っていた矢先。その後、逆転されて敗れた。「もう後悔したくない。思ったらすぐに動こうと決めた」。真骨頂は超人的な守備範囲、そして走塁技術。野球人生を支えたプレーには経験と練習の裏付けがあった。

 「何かを求めて、毎年いろいろ試してきた。その気持ちがなくなったらやめるとき。失敗して覚えての繰り返し」。誇れる技術も、22年間かけて培った。(つづく)【柏原誠、宮崎えり子】