楽天美馬の表情が少し険しくなった。同点の8回2死三塁、代打新井の姿が目に入った。「何となくスライダーをライト前に運ばれる気がして」と不安を募らせながら、初球から5球続けて、直球、シュートを外角に集めた。それまで多投していたカーブ、スライダーなどの変化球は一切見せない。フルカウントで迎えた6球目。「嶋さんの要求と自分の考えが一致した」とサインにうなずいた。それまでと一転して、内角スライダーを投げきり、見逃し三振に仕留めた。「あそこで、あの場所に来るとは頭にないだろう」と裏をかいてピンチをしのいだ。

 「マイナス20%」がマウンド上での余裕をもたらしている。「去年までは常に100%の投球。全力だったことで長い回を投げられなかった。今年は則本や岸さんの投球を見て、80%の力で90%くらいの力を出すことを意識している」と余力を残している。昨季は8回以上投げたのは26試合で1度だけだったが、今季は11試合で5度も記録する。前日9日の広島戦では、投手陣が12失点していただけに「そこを意識していた」とリリーフ陣の負担も軽くした。8回1失点で、則本に次ぐリーグ2位の7勝目を飾った。梨田監督は「いつも則本、岸の2枚看板と言っているが、美馬の存在は本当に大きい」と最敬礼だった。【栗田尚樹】