東北楽天(宮城)が活動開始3年目にして初優勝を飾った。福島との決勝戦は中盤まで接戦。5回に1点差に詰められ、なお1死一、二塁のピンチで救援した渋歩(しぶ・あゆむ)投手(3年)が併殺で切り抜けると、その裏、村上健太内野手(3年)の適時打を皮切りに5点を奪い、勝負を決めた。昨夏、準々決勝で惜敗していた元近鉄、巨人の中浜裕之監督(39)は男泣きした。弘前聖愛(青森)が5位となり、全国選手権(8月3日開幕、神宮など)出場への最後の切符を手にした。

 中浜監督は目を真っ赤にしながら、ベンチ入り選手1人1人と握手してまわった。「プレッシャーのなかでよく戦ってきた。選手たちの力です」。東北各地から集まってきた「エリート集団」は昨秋、今春と東北大会を制覇。3学年そろって迎えた今夏、真の王者としての全国選手権進出を求められていた。

 勝負強かった。5回、1点差に詰められ、なおも1死一、二塁で救援した渋が、1球で三ゴロ併殺に仕留めた。「まだ完全に準備はできていませんでしたが、気持ちで負けないようにしました」。前日24日の準々決勝・仙台太白戦で完全試合(7回)を達成。自信のあるスライダーを軸に、この日も1回2/3を無安打無失点に抑えた。

 打つ方では村上だ。その裏、2死二塁で右前打。貴重な追加点をあげ、この回一挙5得点の呼び水となった。「相手に流れを渡したくなかった。この大会は調子が悪かったけど、考えすぎずにとにかく思い切っていこうと考えました」。この日は3、4番が無安打。しかし、5番村上から9番石井までで5安打6打点するなど、一丸となった。

 中浜監督は「誰かが悪くてもみんなでカバーできるようになってきた」と話した。「野球はいい時も悪い時もある。悪い時にどういう振る舞いをするか。そういうところを厳しく指導してきた」。体力的、技術的に高いレベルにある子供たちに、精神面のタフさを植え付けた。打てなくても打たれても、下を向く選手はいなかった。

 今春の全国選抜大会では準々決勝で、優勝した佐倉(千葉)に2-7で敗れた。「全国で勝つには、打てない時でも工夫して点を取ること。走塁面を磨いて臨みたい」。この日の5盗塁は日本一への布石。リーグ首位を走るプロチーム同様、目指すはてっぺんしかない。【沢田啓太郎】