オリックスが、初代監督で1日に肺炎のため80歳で亡くなった上田利治氏にささげる「弔い星」を挙げた。3位西武との直接対決で、先手を許したが、2回にステフェン・ロメロ外野手(28)が14号ソロで反撃ののろしを上げると、5回に逆転。西武に3連勝して3・5差に迫り、Aクラス復帰を目前にした。2日未明に悲報を聞いた阪急時代の上田氏の教え子、福良淳一監督(57)は「喜んでくれるでしょう、上田さんも」と亡き恩師をしのんだ。

 福良監督は特別な1勝をかみしめた。「よかったですね、今日(2日)取れて。喜んでくれるでしょう、上田さんも」。88年のシーズンオフに球団譲渡があり、「上田阪急」が「上田オリックス」に変わったとき、最強のライバルは西武だった。くしくも、この日その獅子に逆転勝ちで3連勝を飾ってみせた。

 2点を追った2回、ロメロの14号から反撃を開始。4回のマレーロの適時打で追いつき、また1点を追った5回、ロメロの適時打で同点。なおも2死満塁からマレーロが決勝打を放ち、29歳の誕生日を3打点で飾った。今カード1、2戦は追加点を奪えず、薄氷の勝利も、この日は小島が8回にダメ押し打。投手陣も無失点継投で応えた。

 2日未明に悲報を受けた福良監督は、眠れぬ夜を過ごしながら、恩師の厳しさが残したものを思い起こした。「野球の厳しさを教えてくださった。ポジションを取る厳しさ、1度つかんだポジションは離さない厳しさ。上田さんに『(試合)行けるか?』と聞かれてダメとは言えなかった」。福良監督は血を吐く思いで二塁の定位置をつかんだ。だからこそ、満身創痍(そうい)でも試合に出続けた。阪急のベンチ裏では「痛み止めがほしければ、トレーナー室より福良のロッカー」と言われた。鎮痛剤が山積みだった。「だから長くやれたんだと思う」。自分への厳しさを教えてくれたのも上田監督だった。

 かつての常勝の伝統を受け継ぐ選手を育てるのが、今の現場の使命。頼れる4番ロメロに支えられ、若手が力を発揮し、最下位に沈んだままだった昨年とは違う戦いをオリックスは続ける。初代監督に見せたかったチームに変わろうとしている。【堀まどか】