楽天の選手会長が、攻守で存在感を際立たせた。銀次内野手(29)が、5打数4安打2打点と猛打賞をマークした。守備では一塁でスタメン出場しながら、6回裏から入った二塁でも堅守を披露した。負ければ首位陥落の中で、チームを鼓舞する働きだった。

 普通なら、見逃すようなボールだった。1点リードの7回1死一塁で銀次が、第4打席を迎えた。カウント1-2からの4球目、内角ギリギリを突く直球にバットを繰り出した。両肘をたたみ、逆方向の左前へと運んだ。得点にこそ結びつかなかったが、梨田監督が「曲芸みたいな打ち方をしていた。天才みたいな打ち方」と大絶賛するほどだった。

 好調さを物語っていた。初回に二塁への内野安打で先制点を挙げると、3回無死一塁から、右前打でチャンスを広げた。9回にも中前打を放った。今季初めての4安打をマークし、2打点と打線をけん引した。「甘い球、ゾーンだったら、積極的にいこうと思っていた」と全て4球以内に仕留め、リズミカルに快音を響かせた。

 天才的な打撃に、引けを取らない守備も光った。一塁で先発起用されたが、二塁手の藤田が腰に張りを訴えたために6回裏の守備から二塁に移った。7回には1死走者なしから、右翼前方へ落ちそうな飛球をキャッチした。さらに次打者の場面でも、センターに抜けそうな打球を逆シングルで捕球し、一塁へジャンピングスロー。本職も驚きのプレーで、ファンを沸かせた。「いつも藤田さんのプレーを近くで見ているので。途中からだけど、焦りはなかった」と笑顔でグラウンドを駆け回った。

 29歳の中堅は、今でも「野球小僧」だ。「バッティングでも、守備でも、もっとうまくなりたいって毎日毎日、思っている」と言う。早出の練習を欠かさず、年下にも積極的に技術の意見交換を求める。この情熱が、一流のプレーを生んでいる。

 負ければ、首位陥落の中で「自分たちの野球をするだけ」と、目の前の1プレーに集中した。選手会長を任される男が、好調なチームを支えている。【栗田尚樹】