虎は運も味方につけ、外野人工芝にボールを弾ませた。1回は阪神4番福留だ。1死一、三塁から右腕飯塚の141キロ直球を遊撃後方へ打ち上げた。ここで中堅桑原の動きが止まり、両手を上げて「見えない」のポーズだ。薄暮の空で飛球を見失い、ボールは無人の左中間にポトリ。これがラッキーな先制打となった。

 5回にも幸運は続いた。2点リードとして2死満塁。2番上本が2番手藤岡のカットボールを右翼線に打ち上げた。右飛で追加点ならずと思いきや、飛球はフラフラと減速。右翼梶谷のダイビングキャッチはわずかに届かず2点二塁打となった。「当たりは良くなかったですが、いいところに飛んでくれました」。上本は試合後も「たまたまです」と照れ笑いだった。

 運も味方につけた男たちは強い。福留は3回1死から右前打を放ち、5番中谷、6番原口の2者連続弾をお膳立て。8回にも右中間二塁打を決め、5月30日ロッテ戦以来27試合ぶりの猛打賞を記録した。前日5日DeNA戦では左翼守備でライナー性の打球に前進して勝負をかけるも、照明が目に入ったように見える動きで後逸して走者2人が生還。不運ともいえる悔しい守備に泣いた翌日、きっちりお返ししてみせた。

 上本も2点リードに迫られた8回、先頭で左前打。けん制悪送球で一気に三塁と陥れ、3番糸井の犠飛で流れを変えるホームインだ。9回にも犠飛を放ち、勝利への貢献度は抜群だった。運も実力のうち。幸運は、虎打線が完全に勢いを取り戻すきっかけとなるかもしれない。【佐井陽介】