絶対的守護神で首位攻防戦を締めた。1点リードの9回から4番手で登板した楽天松井裕樹投手(21)が、1イニングを1安打無失点に抑え、26セーブ目を挙げた。先発則本が降板後、救援の3投手は無失点で、逆転劇に導いた。チームは日本一を決めた13年以来、4年ぶりの首位ターンを決め、貯金も今季最多の25に伸ばした。

 絶叫が止まらない。「よっしゃー」。声を荒らげた。興奮状態は収まらない。松井裕は鼻息荒く、捕手の嶋と勢いよく手を交わした。「ソフトバンクとは壮絶な戦いとなると、分かっていた」。ベンチ前で迎えたナインとのハイタッチにも自然と力が入った。首位攻防戦という大事な試合の重圧から解き放たれ、感情があふれ出た。

 出番は、いつも以上にしびれる場面だった。同点の9回表に銀次が、勝ち越し打を放ち、迎えた9回裏。松井裕は、先頭・中村晃にセンター前にポテンヒットを許した。さらに犠打と四球で1死一、二塁と得点圏に走者を背負った。だが、落ち着いていた。何度もこうした状況をくぐり抜け、セーブを積み上げてきた。フーッと息を吐き、気持ちを整えた。

 川島を外角スライダーで空振り三振に仕留めると、2死一、二塁で代打・今宮を迎えた。「お互いに手の内は分かっている」。3球続けて直球を見せた。カウント1-2からの4球目はチェンジアップでいったん外した。カウント2-2とし、最後は内角高め直球で三ゴロ。5球中、4球が直球と力でねじ伏せ、虎の子の1点を守り抜いた。

 大一番の中で、個人的な思いもあった。ソフトバンクの前回登板(2日)が脳裏にあった。8回途中からマウンドに上がり、同点打、さらには勝ち越しの適時打を許した。「前回はやられている。負けたくなかった」と気合満点で、リベンジに成功した。梨田監督も「最後はよく抑えてくれた」とホッとした表情だった。

 チームは序盤の4失点をひっくり返し、大逆転で勝利をつかんだ。日本一となった13年以来の前半戦の首位が決まり、貯金も今季最多の「25」に伸ばした。勢いが違う。松井裕は「明日も勝って、気持ちよくオールスターに向かいたい」と言葉を弾ませた。【栗田尚樹】