さすがの一撃だ。阪神福留は有言実行の先制決勝弾を決めた。2回無死、右腕ブキャナンの真ん中に入った142キロ直球系を鋭く振り抜き、ライナー性の打球でバックスクリーンにたたき込んだ。5試合ぶりの8号ソロ。試合の流れをひと振りで引き寄せ、「回の先頭だったので、まずは塁に出ることしか考えていなかった」と納得顔だ。

 ダイヤモンドを回り、ベンチに戻った後は苦笑いが続いた。1発の2球前には自打球を左膝上部に直撃させていた。苦悶(くもん)の表情を浮かべ、杉本チーフトレーナーが駆けつけるほどの激痛。「痛かった…」。その直後に力強くフェンスオーバーさせるのだから、ヤクルトバッテリーもお手上げだろう。

 「野手が点を取ってピッチャーを助けよう!」

 試合前のミーティングでは主将として声を張り上げていた。「それは常に思っていることだし、ずっとピッチャーが頑張っていたのに助けてあげられていなかった。打って点を取って楽にしてあげられて、良かった」。自らのバットでチームの11得点大勝に導き、ホッとひと安心だ。

 福留に1発が出れば今季8戦全勝。昨季から10連勝と影響力は大きい。負ければ3位転落の可能性もあった一戦。主将の値千金弾から、虎は息を吹き返した。【佐井陽介】

 ▼阪神の1試合4本塁打(ロジャース2、福留、大山)は今季最多。14年8月5日ヤクルト戦(神宮)で新井貴、鳥谷、マートン、ゴメスが計4本塁打して以来、3シーズンぶり。