なんか勢い出てきたで~! 阪神中谷将大外野手(24)が1点を追う8回1死一塁から逆転の決勝17号2ランを放ち、チームは4連勝を飾った。直後の鳥谷も4号ソロで続き、連続アーチの逆転ショーに甲子園はお祭り騒ぎ。首位広島も勝って5・5ゲーム差は変わらなかったが、ムードは最高潮だ。5日から直接対決3連戦が控えており、このまま連勝で突っ走ることができれば、いよいよ逆転優勝が現実味を帯びてくる。

 無心で振り切った。レフトへぶっ飛ばした白球を見つめて、中谷は走りだす。「飛距離は完璧やなと思ったので、あとは切れないでくれと思って」。1点を追う8回1死一塁。願いを込めた打球は、左翼ポールの内側を通過。甲子園がどよめく起死回生の17号逆転2ランで、虎を窮地から救い上げた。

 「バットも持ちたくなかったですし、野球したくないとも思ったんですけど、ほんと今日この1本を打てたことによって、すべてが報われたかなと思います」。お立ち台のヒーローは悩んでいたことを打ち明けた。8月22日ヤクルト戦(神宮)から3試合連続でアーチを描いた。だが、ここ5試合では19打数1安打と、沈んでいた。「使ってもらっている。結果で応えたい」。その一心だった。

 不振は深刻で、金本監督は代打策も考えていた。「あそこはちょっとね…。確かに(代打策が)チラつきましたけどね。今日の内容とメンタルではちょっと無理かな、というね。顔にはっきり出る子ですから。本人はおそらく『まぐれで打った』とコメントするんじゃないかと思いますけど、まぐれであろうが何だろうが、当たってあそこまで運べるというのが素晴らしいんでね」。

 決してまぐれではない。奇跡を起こすために中谷が続けていることがある。打席に入るときバットを居合切りのように、八の字を描き斜めからスイング。そして芯の部分を見つめてから、投手に視線を送る。「いつもやっています」。試合前のティー打撃では、右手と左手を上下逆さに持って振り込む。プロ入り後、愚直に工夫を重ね続けることで、自らのスタイルを確立してきた。だからこそ、苦しい場面で結果が残せる。

 敗戦ムードを一掃する一撃で4連勝。チームは貯金を今季最多の「16」にまで伸ばし、最高潮と思えるほど勢いに乗ってきた。この日は首位広島も勝利したため、依然5・5ゲーム差のまま。指揮官は力を込めて言う。「今日みたいな勝ち方もできるようになった。最後まで諦めず、明日も今日の勢いをそのまま持っていきたい」。もう少し手を伸ばせば、届くところにコイがいる。【真柴健】

 ▼中谷が今季119試合目で17号アーチ。このペースで打ち続けると最終的に20本に到達する。大台をクリアすれば、阪神の生え抜き右打者では06年の浜中(20本)以来11年ぶり。他に20本以上打った主な生え抜き右打者は今岡(04年28本、05年29本)、新庄(00年28本など3度)、八木(90年28本など3度)、岡田(85年35本など6度)、田淵(74年45本など9度)がいる。