コイが逃げる! 広島薮田和樹投手(25)が6回3安打無失点で13勝目を挙げた。1回に2点の援護を受けて登板。制球が定まらない場面もありながら要所を締めてチーム単独トップの13勝目をマークした。緒方監督が「反省点もある。紙一重」と厳しい評価を下したのは期待の裏返し。チームも連勝で貯金を28に戻した。 

 本調子でなくても、勝てる。薮田の投球はエース格のそれだ。呼ばれた神宮のお立ち台で「チームが負けないようにするのが投手の仕事。勝つのは打ってくださる野手の皆さんのおかげ」と言った。6回3安打無失点でチームトップの13勝目。1回にもらった2点を守りきって勝っても、野手への感謝を忘れないのが薮田らしい。

 直球の走りが悪く、捕手の会沢は「タテのカットボールが生命線だった」と振り返る。カウントを悪くする場面も多く、薮田自身も「ストライクを必ず取れるボールがなかった。腕の振りが悪くて、見極められた」。それでも見せ球の直球とカットボールを材料にヤクルト打線を料理。「自分が荒れていたのも功を奏した」と乱れた制球も逆手に取って抑えた。

 最大のピンチは6回。無死から連続四球で無死一、二塁を招いた。ここから粘る。リベロを直球で、中村をカットボールで連続三振に打ち取った。そして2死からは奥村をカットボールで高いバウンドの遊ゴロに仕留めた。田中のフィールディングに助けられ「広輔さんのファインプレーに助けられました」と、ここでも感謝の言葉を並べた。

 薮田の好投で猛追する2位阪神とのゲーム差を5・5のまま保った。緒方監督は「結果ゼロ点に抑えてくれる投球をしてくれた。今日の試合はよく頑張ってくれた」と評価しながらも「簡単に先頭打者に四球を出すという内容はね。紙一重で失点につながる。イニングの入りというのをもう1回しっかりやらないと。痛い目に遭うよというところ」と手放しでの称賛はなかった。期待の星ではなく、やってもらわなければならない存在になった証拠だ。試合を消化するたびに成長する広島。虎の足音は大きくならない。【池本泰尚】