ソフトバンク工藤公康監督(54)が、涙の2年ぶりV奪回だ。マジック1で迎えた西武22回戦(メットライフドーム)で圧勝し、球団はパ・リーグ18度目、1リーグ時代を含めると20度目のリーグ優勝を飾った。

 リーグ優勝の立役者の1人、ソフトバンク甲斐拓也捕手(24)の母小百合さん(50)も孝行息子の笑顔に目を細めた。タクシードライバーとして女手一つで甲斐を育て上げた母は、大分から日本一の瞬間を待つ。

 小百合さんは、リーグV奪回に喜ぶ息子の姿に感慨にふけった。

 小百合さん 今年、本人の努力が認められて活躍できているのが本当にうれしいです。

 あのころを思えば今は天国だ。育成選手から支配下登録された13年以降、息子から「結果が残せない」と悩みを打ち明けられていた。

 小百合さん 苦しんでいましたね。「もう帰っておいでよ」って言ったことがあったんです。親からみてもかわいそうで仕方なかった。野球のことはよく分からないし、私は聞いてあげることしかできなかった。でも、本人は絶対に弱音ははきませんでした。

 野球をあきらめることを勧めたことも。それでも頑張る息子の姿に全力でサポートすることを誓った。

 小さいころから負けず嫌いだった。小学校に入る前に、大分・楊志館のエースだった兄大樹さん(27)の影響で野球を始めた。まだ甘えたい盛りだったが、甲斐は違った。

 小百合さん 練習に行っても絶対に私のところには来なかった。

 甲斐が2歳のころに離婚。女手一つで兄弟を育てた。

 小百合さん 母子家庭だけど、強い子に育てようと思いました。

 離婚後に「育児にも時間が取れる」と地元大分のタクシー会社で女性ドライバーとして働いた。23年目、個人で営業することになった今年から、試合に合わせて仕事は入れず、自宅でテレビ観戦した。

 小百合さん 何かしてくれるんじゃないか、ワクワクさせてくれるんです。それとしょっちゅう電話してくれて何でも話してくれるんです。それが一番うれしい。拓也がこんなに活躍してくれたこと自体、十分幸せですけど、これからもケガをしないように頑張ってほしい。

 次なる目標、日本一に向けた拓也の挑戦を、母小百合さんは、タクシーのハンドルを握りながら応援し続ける。

 ◆甲斐拓也(かい・たくや)1992年(平4)11月5日生まれ、大分市出身。楊志館から10年育成ドラフト6位でソフトバンク入団。登録名は「拓也」。13年オフに支配下登録。今季は本名の「甲斐拓也」に登録名を変更。5月2日西武戦でプロ初本塁打を満塁弾で飾る。今季年俸900万円(推定)。170センチ、75キロ。右投げ右打ち。