楽天先発の岸孝之投手(32)が、マウンドで崩れ落ちた。どんな時も感情を出さないクールな男が、しばらく体を動かすことが出来なかった。球審が駆け寄る珍しいシーンの後、ようやく立ち上がった。梨田監督が交代を告げると、下を向いたまま三塁側ベンチに退いた。7月19日の日本ハム戦(札幌ドーム)を最後に、白星から遠ざかっている。これで7連敗で10敗目。「本当に申し訳ないです。すみません」と球場を後にした。

 この日の121球目だった。7回裏に飛び出したアマダーの1発で逆転した直後の8回。1死から四球を与え、投前に転がったバント処理を怠り、自らの犠打野選で1死一、二塁とした。「何とか刺したい気持ちだったけど。逆転してもらって、何とかしたい気持ちだけだった」。2死一、三塁で、吉田正を迎えた。カウント1-1からの3球目、ど真ん中の145キロ直球を右中間スタンドへ運ばれた。岸、嶋、銀次までも下を向いた。それだけ痛い1発だった。

 勝てば、2位西武に1ゲーム差だった。1点リードで迎えた8回表の直前、スクリーンに他球場の途中経過が表示された。「ロッテ4-1西武(9回表)」。楽天ファンのボルテージが一層と高まった。結果的に西武は敗れた。岸の落胆ぶりも無理はない。梨田監督も「普段は冷静な岸が…」と言葉を詰まらせた。残りは、15試合となった。しびれる試合は続く。明日23日からは、首位ソフトバンクと3連戦。今日の悔しさをチーム一丸でぶつけるだけだ。【栗田尚樹】