巨人が来季のリーグ優勝の吉報を、別れを告げる打撃投手に届ける。

 19日、宮崎秋季キャンプを打ち上げた。この日は今季限りで定年に伴い退団する岸川登俊(たかとし)打撃投手(47)のラスト登板。練習後には現役時代は専属パートナーだった高橋由伸監督が真剣勝負で打席へ。初球はマン振りで空振り。だが6球目に快音を響かせ、中堅右のフェンス手前まで大飛球を運んだ。11球の“会話”を終え、2人は抱き合った。

 高橋監督は「最後のバッターだったからね。ずっと個人練習を手伝ってもらったのでね」と振り返った。岸川打撃投手は「監督にお願いして対戦した。『ありがとう』と言われ、いろんな意味が込められてるなと。最後の打者が高橋由伸で良かった」と笑った。

 現役時はルーティンで決まった短い距離からワンバウンドを打ち返した。ある時、歩数を数えると背番号と同じ“24”歩だった。引退時には使用済みのスパイクも渡された。「ともに戦いましょう」との思いも添えられていた。打者をサポートする裏方は1年間3万球を投げるともいわれ、16年間で約50万球をささげた。集大成を24番のスパイクとともに投じた。「来年から野球を見る時間があるか分からない。でも監督が活躍してくれたらうれしい」。願いをかなえるため、巨人は戦う。【広重竜太郎】