各界の3大著名人が、阪神岩田稔投手(34)に金言エールだ。岩田が7日、都内でプロ野球選手の社会貢献活動を表彰する「第19回ゴールデンスピリット賞」の表彰式に出席した。自身も抱える1型糖尿病の啓発活動を10年間続けてきた実績が評価されたもの。宴席では同賞選考委員の巨人長嶋茂雄終身名誉監督(81)が「やったら、いいんよ」と激励。京大iPS細胞研究所・山中伸弥所長(55)や人気作家・村上龍氏(65)からもメッセージを送られた左腕が、来季逆襲を誓った。

 岩田は終始、恐縮しきりだった。「あこがれの方なので。(緊張が)倍増でした。汗かきました。喉が渇きましたね」。1型糖尿病の啓発活動が認められた晴れの舞台。愛妻からの誕生日プレゼントだという黒色スーツは汗ばんでいた。

 「やったら、いいんよ」

 隣に座った初対面の巨人長嶋茂雄終身名誉監督から、思わぬ金言を授かった。ゴールデンスピリット賞の選考委員を務めたミスターは、巨人ファンだった岩田には雲の上の存在。「本(自叙伝『やらな、しゃーない!』)の題名と同じようなことを言っていただいて。しっかり頑張っていきたい」と心を新たにした。

 岩田は大阪桐蔭高2年冬に1型糖尿病を発症した。「人生終わったな、と思った。一生ベッドの上で生活していくんだな、と」。それでも同病患者だった元巨人ガリクソンの著書に励まされて再起。病気が原因で社会人チームへの内定が取り消されても「ここで負けたら社会で生きていけない」と心を奮い立たせた。

 阪神では08年から患者との交流会、病院訪問などに尽力してきた。09年からはNPO法人日本IDDMネットワークを通じ、1勝につき10万円を1型糖尿病研究基金に寄付。表彰式では、そんな姿に共感した2人の大物著名人からもサプライズメッセージが届いた。

 まずはノーベル医学生理学賞受賞者で京大iPS細胞研究所の山中伸弥所長だ。「苦しんでおられる患者さんを支援されていることは本当に素晴らしいことで、心から敬意を表します。私たちもiPS細胞を使って、1日も早く1型糖尿病の患者さんに新しい治療を届けることができるように、努力を続けて頑張ります」。1型糖尿病患者を描いた「心はあなたのもとに」の著者で人気作家の村上龍氏も続いた。「岩田投手の活躍、今回の受賞は大勢の方に勇気を与えるだけではありません。大げさでも何でもなく医療、科学技術に寄与し、人類の未来に関係する価値のあるものだと思います」とたたえられた。

 さらに、これまでの寄付金を財源とした同病研究基金「岩田稔基金」の創設も発表され、岩田に気合がみなぎった。「本業で頑張らないと寄付はできない。1型糖尿病のプロ野球選手は僕しかいない。絶対に崩れられない」。啓発活動は生涯続ける覚悟だが、現役の間はマウンドで勇姿を見せ続ける。来季の完全復活へ、「やったら、いいんよ」精神で臨む。【佐井陽介】