やっと出た! ロッテのドラフト1位、安田尚憲内野手(18=履正社)が巨人とのオープン戦でサヨナラ適時打を放った。キャンプ中から4番で起用されるなど期待をかけられてきたが、実に対外試合25打席ぶりの快音。この日は井口新監督の本拠地初実戦。待望のオープン戦初安打が、チームに最高のエンディングをもたらした。

 相手野手のグラブ下をすり抜けた打球を見ると、安田はつき物が落ちたような顔で手をたたいた。左前打。サヨナラだ。「何とか食らい付こうとした結果。泥くさいヒットでしたが、今の自分には一番いいヒットでした」。ベストなスイングでも、会心の当たりでもない。それでも、もがいた先に光は差す。今の自分を象徴するような決勝打だった。

 同点の9回裏に舞台は整った。2死満塁。「アウトになれば試合が終わる。それまでの打席と違う緊張感はありました」。落ち着いていた。1球目に見逃した巨人谷岡のフォーク。ねらい球ではなかったが、1球見たことでインプット。やや甘く抜けた外角への2球目を逃さなかった。

 対外試合25打席ぶりの快音だ。18歳ながら、キャンプ中の対外試合初戦から4番に座った。だが2月17日の台湾・ラミゴ戦で右前打した以降は練習試合、オープン戦ともに無安打。「とにかく自分のスイングをすること」と毎日言い聞かせた。くよくよする姿はなかったが、3月に入ると「しんどい」の言葉が漏れるようになった。

 すり足打法にしたり、右足を上げたり。試行錯誤を繰り返した末の1本が、井口監督の本拠地初采配に勝利の花を添えた。指揮官は「やっぱり持ってますね。ああいう場面で回ってくることはなかなかない」とスター性に拍手。守備では、新しい人工芝に足を取られて転ぶ場面もあったが、最後に主役をかっさらった。

 打席経験を積ませるため、オープン戦終了までの1軍同行が決まっている。「プロでサヨナラ打。子どものころから見ていた光景を実感できた。でもまだまだ未熟です。もっと実力をつけていきたい」。持ってる男は、どこまでも謙虚だった。【鎌田良美】