昨年1月に胃がん手術を受けた広島赤松真人外野手(35)が、復活へ大きな一打を放った。11日、教育リーグ・オリックス戦(舞洲)に途中出場し、8回に中越えへの2点三塁打で術後初安打をマークした。今春キャンプを2軍で完走し、今月4日に代打で15カ月ぶりの実戦復帰。そして安打を放った。「1軍に貢献をして3連覇」との目標にまた前進した。

 赤松は全身に力を込め、バットを振った。8回2死一、二塁。佐藤世の直球をたたいた打球が、前進していた中堅手の頭上を越えた。スピードスターは長い長いブランクを感じさせることなく、あっという間に三塁に達した。

 「あれはセンターフライですよ。前進守備だったんで。でも打てないより、打った方がいいので良かった」。記念すべき復帰後初安打。本人は淡々と振り返ったが、打った瞬間は広島ベンチだけでなく、球場全体が沸いたことが、その1歩の大きさを物語っていた。

 前例のない闘いが続いている。昨年1月の胃がん摘出手術から抗がん剤治療、リハビリなどを乗り越え、今春は2年ぶりに2軍でキャンプ参加。フリー打撃では柵越えを放つこともあった。今月4日、教育リーグ中日戦で実戦復帰。一昨年の日本シリーズ以来、15カ月ぶりのことだった。そして待望の安打が出た。

 「打席で球がめちゃくちゃ速く見える。守備でも今日は5、6回飛んできた。かなりしんどかった」と背番号38は苦笑い。7回から外野に入り、多くの守備機会をこなした。まだまだ不安を抱えるが、以前のようにグラウンドを躍動する姿が戻ってきた。

 「前に進んでいる実感はあるが、筋力や体力的にまだまだ。もっと練習しないといけない」。最終的な目標には、走塁や守備で貢献してのチーム3連覇を掲げる。喜んでばかりはいられない。契約更新してくれた球団に感謝し、野球ができる喜びをかみしめながら、少しずつ階段を上がっていく。【大池和幸】