大願成就へ、白星発進した。西武菊池雄星投手(26)が日本ハム打線を7回4安打2失点に抑え、開幕勝利を飾った。最速150キロの直球はいまひとつだったが、スライダー、カーブ、さらに新球ツーシームを織り交ぜ、粘り腰で3年連続開幕投手の大役を全うした。打線も開幕戦では球団最多となる15安打を重ね、11得点と爆発。球団40周年の節目。08年以来の優勝へ、勢いがつく1勝だ。

 白星にも、菊池は謙虚だった。「野手の皆さんに早い段階で点を取ってもらった。仕上がり自体は、正直、粘りながらでした」と打ち明けた。立ち上がりから球が上ずった。初回、日本ハム先頭西川への初球は外高めに外れる149キロ。ボール先行が続いた。点こそ与えなかったが、初回だけで24球。2回に1点先制、さらに3回の一挙7得点が大きな援護となった。

 不安定でも粘れたのは、引き出しが増えたからだ。「直球は最後まで納得する球がなかった」と軸球が定まらない中、カーブでカウントを整えた。「去年は、あまり出来なかったこと。良い面が出た」。昨季は最多勝と最優秀防御率の2冠。そこに、あぐらをかかなかった。オープン戦では毎回、テーマを設定。カーブを決め球に使った日もあった。したたかに準備してきたことが生きた。

 もうひとつ、新たな引き出しがツーシームだ。2回2死、大田にカウント1-1から外に投げ、ファウルを打たせた。わずかに逃げる球で追い込み、最後は内寄りスライダーで遊ゴロ。ゾーンを広く使った。今春キャンプから、フォークの精度向上か、新球ツーシームか迷ってきた。一時はフォークに傾いたが、いまひとつ。最終的にツーシームを選んだのは“科学”と“ひらめき”の融合だった。

 科学は計測機器のトラックマン。球団の測定によると、菊池の投球フォームが生み出す球の回転軸にはツーシームが適しているという。さらに、オープン戦最終登板を翌日に控えた22日の朝。目覚めたら、なぜか「ツーシーム」と頭に浮かんだ。実は、枕元にメモ帳とペンを置いて寝る。「起きた時に、ひらめくことが多い。忘れたくないので」。ツーシームと書き留め、2度寝をした。翌日のDeNA戦で試し、手応えを得た。この日は5球ほど。「今日1日で、どうこうはない。少しずつものにしたい」と、新たな武器を磨いていく。

 開幕前の27日。必勝祈願で狭山不動寺に納めた絵馬に「NO・1」としたためた。内容に不満は残る第1歩だった。だが「シーズンは長い。調子が良い日、悪い日はある」。悪くても粘れたのが収穫。大願成就へ、歩み出す。【古川真弥】