エースの熱投が昨春王者をねじ伏せた。福島大・渡辺晃太投手(4年=安積黎明)が、石巻専大から1安打完封勝利を挙げた。最速139キロの直球主体に厳しいコースを突き、1安打3四死球で6奪三振。昨年の全日本大学選手権で共栄大(東京新大学)から完投勝利を収めた好投手の松沢寛人(2年=糸魚川)に投げ勝った。チームは1敗を堅持。01年以来17年ぶりの春優勝へ、勢いに乗った。

 渡辺は初回、いきなり先頭打者に四球を与えても、顔色1つ変えなかった。1死二塁を脱すると、涼しい顔でベンチへ駆けた。「ピンチでも、あまり不安にはならない。その前に気持ちのギアを上げるので」。言葉通りの強気の投球で、次々と打ち取った。許した安打は、4回1死から伊藤甲斐内野手(4年=専大北上)に浴びた右前打のみ。三塁も踏ませなかった。

 打線も援護で応えた。5回2死三塁、万城目晃太外野手(2年=利府)が「粘る渡辺さんを助けたかった」と内角低め直球を振り抜き、先制の中前適時打で均衡を破った。「とにかくつなぐことだけ考えて確実に当てた」という泥臭さが、両軍唯一の得点をもたらした。

 選手は冬場、氷点下の極寒でも、大雪の中でびしょぬれになって、ほぼ毎日グラウンドに出てバットを振った。「つらかったけど、楽しかった」と渡辺。苦境に立たされても、その状況を楽しむ練習を積んだことで、平常心でプレーできた。渡辺は8日の開幕戦でも山形大から完封勝利を挙げており、「ホッとしました」。試合中のポーカーフェースからようやく、笑顔に変わった。【神稔典】