阪神大山悠輔内野手(23)が金本知憲監督(50)の指令通り、引っ張って20打席ぶりのタイムリーを放った。1点リードの3回2死一、二塁で左前に運んだ。21日の巨人戦では2度の満塁機に1本が出ず苦しんでいた2年目の大砲候補。チームの連敗も3で止まった。ここからガンガン頼むで~。

 一塁ベースをまわると、バチンと強く両手をたたいた。大山が3回に左前適時打を放ち、先発メッセンジャーを援護した。

 「追加点の欲しい場面でしたし、2アウトから福留さんと糸原さんがチャンスを作ってくれたので、詰まってはいましたが、練習してきたスイングができて良かったです」

 試合前までの得点圏打率は0割5分と、どん底まで沈んでいただけに、浮上のきっかけになる一打だった。1点リードの3回2死一、二塁。ハフの5球目132キロカットボールを強くたたくと三遊間を抜けた。詰まっていたが力で押し込んだヒット。10打席ぶりにともしたHのランプは自身20打席ぶりのタイムリーとなった。

 今季は開幕前から「芯を持って取り組めている」と語っていたが、若虎に悩みは尽きなかった。練習前にはティー打撃を、試合後にもマシン打撃を-。「不安だから練習するんです」。どれだけ振り込んでも、まだまだ足りない。金本監督からは、姿勢が前のめりになるため「猫背禁止令」が出たり「引っ張りのススメ」を説かれるなど、試行錯誤を繰り返した。

 迷っていたのは打撃フォームだけでない。20日からの巨人3連戦は、オレンジバットを持って打席へ。バットを変えてすぐの打席では中前打を放ったが、その後は8打席連続無安打。その間にチームは本拠G戦3連敗の屈辱を味わった。この日も試合直前のベンチ前スイングまではオレンジバットを持っていたが、意を決して原点回帰。“相棒”を呼び戻しての適時打だった。

 試合前には主将の福留からも指導を仰いだ。左肘が上がることを指摘されるとティー打撃では意識的に高めのボールを上から振り落として修正。授業料の要らない「生きた教科書」に助言をもらうと、何度もバットを体の前に押し出してポイントの確認を行うなど、素直さが結果にも表れた。

 打撃だけでなく、三塁の守備でも存在感を示した。1点リードの6回1死一、二塁。4番バレンティンの鋭い打球を前でさばき、5-4-3の併殺を完成。絶体絶命のピンチを切り抜けた。結果を出したが、試合後も表情は緩まなかった。「また明日からも頑張ります」。短い言葉に闘志を込めた23歳の若武者。修行は、まだまだ続いていく。【真柴健】