虎が記録的惨敗で貯金を吐き出し、勝率5割に戻った。阪神先発の能見篤史投手(38)が広島7回戦(マツダスタジアム)で初回から3被本塁打などカープ打線につかまった。虎投が初回3発を浴びるのは今世紀初の屈辱。能見は4回9失点KO。後続投手陣も広島の猛攻を食らい、3連敗となった。

 プレーボール直後なのに絶望を味わった。ため息、どよめき、悲鳴が黄色く染まる三塁側パフォーマンス席に渦巻く。スコアボードに刻まれたカープの得点は「6」だ。2回も「3」を追加され、悪夢の9失点…。金本監督は険しい表情で言う。「2回で終わったわね。見ての通りよ。答えようが…。何を言うてほしいのか知らないけど、見ての通り」。今季最多の14失点は歴史的な屈辱になった。

 中11日で満を持して先発したベテラン能見が赤ヘル打線のえじきになった。1回、先頭田中から空振り三振を奪った直後だ。菊池への2球目は不用意な真ん中高め直球。強振され、左翼席に吸い込まれた。容赦ない波状攻撃に遭う。続くバティスタには低めフォークを長いリーチですくわれ、再びライナーで左翼へ一直線。2者連続アーチを浴びた。適時打、暴投で失点を重ね、なおも2死二塁。石原には内角高め速球を完璧に仕留められた。左翼にトドメの2ランを痛打された。1回の3被弾は球団史上、今世紀初の悪夢だった。

 能見の球威は歯が立たなかった。前回登板の4月29日広島戦は最速149キロをマークし、6回3失点と粘っていたが、この日は14年6月29日中日戦以来、4年ぶりの9失点。再び2軍で調整する。「ああなってしまったので…。それ以外は何もない」と話したきり、バスへと消えた。広島は攻め手を緩めない。さらにキバをむいたのは7回だ。2番手山本が再び菊池、バティスタに連続アーチを浴びた。2者連続本塁打を同じ打者に食らうのも、実に31年ぶりのレアケースだ。

 前夜は東京ドームで巨人と戦い、この日は午前中、約4時間の新幹線移動後にカープ戦だった。巨人に連敗した流れを止められず、ワンサイドゲームで連敗は3に伸びた。勝率も再び5割に逆戻り。首位広島に迫るはずが、いまの力量差を突きつけられた。昨季、3勝8敗1分けと苦戦したマツダスタジアムで今年も黒星が先行し、投壊&貧打の窮状。今日12日の第2ラウンド。サンドバッグのように打ちのめされたままでは終われない。【酒井俊作】

 ▼能見が自己ワースト2位タイの9失点と炎上。最悪の14年3月28日巨人戦(開幕戦)10失点に次ぎ、同年6月29日中日戦9失点と並んだ。また1試合3被本塁打は自己ワーストタイ。13年8月3日巨人戦で村田、ロペス、中井に打たれたのと並んだ。