ついにトンネル脱出だ! 日本ハム清宮幸太郎内野手(18)が、5試合22打席ぶりとなる安打を放った。7回1死、西武カスティーヨから右翼線への二塁打で、貴重な追加点に貢献し、勝利につなげた。9日のオリックス戦でプロ初本塁打を放った直後からの連続打席無安打に、幼少期から思い出のある東京ドームで終止符を打った。

 打つと、決めていた。1点を先行した直後の7回裏1死。21打席連続無安打中だった清宮は、燃えていた。「絶対に打ってやろうと思っていた」。バットの先ながら、右翼線へ運んだ。打球が高く弾む間に二塁まで到達。貴重な2点目を呼び込んだ。「素晴らしいプレーを、みんなの目の前で見せてくれた。絶対に何かが起こると思っていた」。7回表2死一、二塁のピンチで中田が邪飛をジャンピングキャッチ。主将の気迫あふれる姿を起点にレアードの先制弾が飛び出していた。「あの後、3人で終わるのは絶対に嫌だった」。強い意志が打球に乗った。

 思い出の地で、無安打地獄の暗闇から抜けた。何度もプロ野球を観戦した東京ドームで、人生初の試合。「ここでは、いろんな思い出がある」。14年前の04年4月にはメジャー開幕戦を観戦。ヤンキース松井の凱旋(がいせん)アーチを目に焼き付けた。6年前の12年6月は日本ハム主催試合、同年10月には日本シリーズで始球式に登板。訪れるたびに、プロ野球選手への思いを募らせた場所だ。

 試合前には新たな思い出が加わった。西武の4番山川とバット交換をした。あいさつに出向き、自身と同じスラッガーの相棒を快く譲り受け、自分の相棒も手渡した。山川からは「どうやって、あんなに打ってるの?」と質問されたが「分からないです…」と初々しい返答。その後のフリー打撃で柵越えを連発する清宮の姿に、山川は「えぐいです。強烈。単純に、すごい」と舌を巻いた。

 相手主砲をとりこにさせる技術に加え、精神力も、えぐい。無安打が続いていても「あんまり気にしていなかった」。この日は両親と弟が見守る前で、勝利につながる一打を披露。「そこ(二塁打)からつながって点が入ったことがうれしい」。東京ドーム初陣は、幸先のよいスタートとなった。「楽しかったです。プレーしやすかった。いろんな選手を見て、かっこいいと思っていた。自分も、そんな選手になりたい」。試合後にはサインボールを右翼席へ投げ入れた。次は、夢の詰まったアーチを放り込む。【木下大輔】