日本ハムのニック・マルティネス投手(27)が、大粘投で“パパ初白星”を挙げた。3割打者ぞろいの西武打線に7回8安打無失点。3者凡退は1度もなく、終盤まで粘り4勝目を手にした。1日に第1子の長女ヴェラちゃんが誕生したばかり。出産準備で1度先発を回避し“産休明け”初登板だった8日オリックス戦は来日ワースト8失点も、汚名返上の頼もしい姿を見せた。

 パパ1勝は、大粘投の末に生み出した。マルティネスはヒーローインタビューで、まずは帽子を取り、丁寧にあいさつ。そして、高らかに宣言した。「気分は最高です。今日の1勝は、娘にささげます」。今月1日に誕生した第1子の長女ヴェラちゃんへ、初めてのプレゼント。3割打者がそろう西武打線に真っ向勝負し、投げ勝った。3者凡退は1度もなし。7回8安打無失点で、今季4勝目を挙げた。

 パパは強かった。5回1死満塁。2者連続四球で最大のピンチを迎えたが、ハートは冷静だった。「今日は必要な時に、制球を低めに定められたのが勝因だね」。中軸の浅村を遊飛、山川を遊ゴロと内野エリアで打ち取った。再三の危機にも、強気の姿勢を貫いた。「チーム一丸となった精神的な強さで、強いチームに勝てた」。自身にも、チームにも、大きな価値がある粘りの1勝を誇らしげに喜んだ。

 パパ魂を注入した。試合前にはテレビ電話式のスマートフォンアプリ「フェースタイム」で、愛娘を見ながら妻キンバリーさんとの会話を楽しんだ。「フェースタイム」は日課。誕生直後には米国から兄弟も駆けつけ、至福のひとときを過ごしてきた。「今日から積み重ねる勝利は、全て娘にささげたい」と、モチベーション最大値で試合に臨んでいた。

 パパのリベンジ成功だ。“産休明け”初登板となった8日オリックス戦は4回途中で、来日ワーストの8失点。出場選手登録を抹消されたため、登板間隔が中11日と空いた影響もあった。2死満塁などピンチでは、連打で打ち込まれた苦い記憶があった。この日は反省を生かし、同じ過ちを繰り返さなかった。栗山監督は「だから絶対的な信頼感を持っている」と先発の軸として、信用を深めた。パパ・パワーを右腕に込め、頼もしさが増した。【田中彩友美】