冷や汗のプロ初セーブをマークした。日本ハム有原航平投手(25)が13日、「日本生命セ・パ交流戦」の阪神戦(札幌ドーム)で、9回に起用され1セーブ目を挙げた。3点リードで登板し、2失点したが2奪三振でチームの連敗を4で止めた。昨年の開幕投手を務めるなど先発の軸と期待された右腕が、4年目で初の救援登板。栗山英樹監督(57)の守護神抜てきに、まずは結果を残した。

 自分を信じて、腕を振った。有原が口を真一文字にして、集中力を高めた。1点差に迫られた9回2死三塁。最後はフォークで原口を空振り三振。鬼気迫る表情が、やっと緩んだ。「とりあえず、勝って良かった」と、ほほ笑んだ。2点は失ったが、リードは守りきった。プロ初セーブ。クローザーに求められる、試合完了の仕事をやりきった。

 初球から、気持ちがこもっていた。先頭の福留に151キロ直球でストライクを奪った。先発で4勝していたが防御率6点台で5月28日に登録抹消。2軍再調整中にテーマに掲げていたのが直球の再生だ。「吉井コーチから強い真っすぐを投げられるようにと言われた。まずは、そこをしっかりやってくるようにと」。登板した試合の初球に一番いいボールを投げることを意識してきた。その成果を、守護神として披露した。

 約2週間の降格期間は実戦登板なし。2月の春季キャンプ中に負った右肩痛で出遅れ、急ピッチで仕上げた体を休めながら、持ち味を取り戻すことに専念してきた。先発から抑えへの配置転換を言い渡されたのは、1軍合流した10日。横浜スタジアムで栗山監督から通達され、「言われたら、やるしかない」。腹をくくり、再登録された前日12日からブルペンで待機した。

 前日12日の試合前に栗山監督は「優勝するために、どういう仕事をしてもらうか考えている。あれだけのピッチャーが輝かないと優勝しないだろ」と言った。この日の試合前にも「優勝すると決めて臨んだシーズン。航平が活躍しないといけない。そのために手を打ち尽くす。オレが仕掛けられることは、やり尽くす」。そんな覚悟を込め、打った勝負手だ。

 有原は150キロ超えの直球に鋭いフォークで三振奪取能力にたける。制球力もあり、四球の心配は少ない。クローザーを務める要素はそろう。先発で果たせなかった役割を、今は守護神として果たすだけだ。栗山監督も「最初なんでね」と、失点した有原を気遣いながら「もっともっと、これからすごい球を投げてくれると思う」と、期待した。苦しいスタートを切っていた有原が、新クローザーとして巻き返す。【木下大輔】