阪神が予期せぬ形で球宴前の日程を終えた。今日9日からの広島戦(マツダスタジアム)の中止が決定したため、前半戦最終戦となった8日のDeNA戦(甲子園)。金本知憲監督(50)は1失点の岩貞祐太投手(26)に5回で代打を送るなど総力戦で臨んだが、今季7度目の完封負けを喫した。後半戦は借金3から逆襲を期す。

 肩透かしの前半戦ラストゲームになった。西日本を襲った豪雨災害の影響で今日9日からの広島3連戦が急きょ中止。ナインは試合前に伝え聞いた。気合は空回りし、芯でとらえた打球は野手の正面を突く。今季7度目の完封負けを喫した。「まさか、こんな形になるとは…」。悔しがり、落胆する選手もいた。

 まさにエアポケットだった。5日から3試合連続の雨天中止。この日は晴れ間が見えた。当初は前半戦の勝率5割復帰を目指し、残り4試合を戦い抜く心づもりだった。中国地方は交通機関がまひ。用具運搬のルートも入念に検討し、球団首脳も「ナイター後に出発して、12時間近くかかります」と説明していた。首位との3連戦が流れ、期せずして節目の一戦になった。

 金本監督も戦い方を変えた。1点を追う展開。動いたのは5回1死二塁の攻撃だ。力投していた先発岩貞に代打原口を送る。指揮官は「攻めないとと思って」と振り返った。勝ちパターンの投手を積極的に投入して、必死で勝機を探った。総力戦で挑みかかった。

 リリーフ陣も耐えに耐える。6回はベテラン能見が筒香からの攻撃を3者凡退で封じる。7回は好調の藤川だ。最速150キロと球威抜群の速球で2奪三振の3者斬り。打線の反撃を待った。テレビを見れば、2階まで浸水する街の光景が映る。犠牲者も出る惨状だった。藤川はキッパリ言う。

 「明日から試合ができないので、しっかり練習してファンにいいプレーを見せられるように。自然災害なので…。しっかり、いいプレーを見せられるように練習します」

 終盤に入っても、救援陣の心意気は衰えない。8回は桑原が奮戦し、9回はドリスが踏ん張った。4投手による鉄壁リレー。前日7日には金本監督が「後ろを固めたチームが最後、残りそうな気もする。今年の野球は」と後半戦のポイントを話していたが希望を持てる折り返しの継投だった。

 前半戦を終えて74試合で35勝38敗1分けだ。借金3を背負って、勝負の後半戦に向かう。金本監督は語気を強める。「後半戦、いち早くかえせるように行くしかない。調整するだけ。投手も行かせるし。(2軍戦がある)鳴尾浜に、明日から」。敗れはしたがファイティングポーズを崩さず、ターンする。【酒井俊作】