気持ちでつかんだ10勝目だ。西武多和田真三郎投手(25)がオリックス打線を5安打1失点に抑え、完投で自身初の2ケタ勝利に達した。前回16日のソフトバンク戦は、4回途中11失点の大炎上。後半戦の開幕投手を任された期待を裏切ったが、1週間で立て直した。負ければ首位陥落の1戦で、3年目右腕が堂々の投球を見せた。

 8回を終えた多和田は、辻監督から「(9回も)いけるよな?」と聞かれた。ニコッと笑い、迷うことなく「いけます」と答えた。3者凡退で締め、5安打1失点完投勝利。「前回は早い回で代わっている。今日は1人でも多くと思っていました」と打ち明けた。

 前回は4回1死で降板した。自己ワーストの14安打11失点に「チームに申し訳ないです」と、うなだれた。前半戦は週後半カードの第2戦が主。前日にエース菊池が勝ち、いい流れでつないでくれた。結果で自信を持たせる首脳陣の狙いが当たり9勝。いざ独り立ちと、後半戦開幕を任されたら最悪の結果となった。

 気持ちの面で悔いが残った。降板後、辻監督にベンチの隣へ呼ばれ、「打者に向かっていけ」と諭された。「カード頭の自覚を持たないと」と誓った。前日練習を終え「週の流れをつくれるように」と繰り返した。おっとりタイプの心に、監督が火をつけた。

 この1週間はフォーム確認がメイン。体が横振りで、直球はシュート回転、スライダーは曲がりが大きくなっていた。「多和田が悪い時の典型」(土肥投手コーチ)だった。まず右足に体重を乗せることを意識。反復で形を取り戻した。試合は、尻上がりに良くなった。両サイド低めに直球を決め「6回からバランスも良くなり、後半の方が楽でした」と、完投を可能とした。

 週の頭を飾り「周りも見ている。気持ちを見せようと」。初の10勝。何勝まで? と問われ「それより来週のソフトバンク戦。リベンジです」と強い気持ちで答えた。【古川真弥】