ヤクルトが巨人を抜いて単独2位に浮上した。巨人先発ヤングマンを打ちあぐねていたが、5回の攻撃前に円陣を組むと一変。3連打で1点差とすると、ウラディミール・バレンティン外野手(34)が左翼席最上段へ逆転の23号3ランを放った。セ・リーグ本塁打王争いで同僚の山田哲と並ぶ一振りで、チームを5連勝に導いた。

 行方を追うまでもなかった。1点差の5回無死一、二塁。カウント3ボールで、バレンティンは神経を研ぎ澄ましていた。ヤングマンが投じた真ん中のカーブをフルスイング。打球はあっという間に左翼の5階席に吸い込まれた。本塁打争いでリーグトップの山田哲に並ぶ23号逆転3ランで5連勝を飾り単独2位に浮上。「ストライクなら打とうと思っていた。甘いカーブを見逃さず打てた。スゴイアタリ」と自賛した。

 主砲のバットから快音が鳴りやまない。1打席目の中前打で9試合連続安打を決めると一気に3安打。「自分は7月からが毎年いい。夏場に強いのが好調の要因だね」とうなずいた。

 あの姿と重なってきた。13年に60本塁打を放ち、王貞治(巨人)ローズ(近鉄)カブレラ(西武)が55本塁打で保持していた日本プロ野球シーズン本塁打記録を更新した。

 今季は19本塁打で前半戦を終了。シーズン36本塁打ペースだったが、後半戦の開幕を迎えた16日のDeNA戦前、自信満々に断言した。「グッドコンディション。ロクジュッポン、オッケー。残り66試合で41本? 大丈夫。1試合1本でオッケーだ」。現在の体重は約110キロとベストの108キロから許容範囲の2キロ以内。大好物の焼き肉は脂身のあるカルビでなくハラミを選ぶなど「食欲」より「打ちたい欲求」を優先させている。

 後半戦は8戦4発。現状は年間52本ペースだが、13年は7月以降に36発を量産するなど勢いに乗れば止まらないだけに、ペースアップも十分にある。「山田とお互いに打てているのはうれしいけど一番大事なのは勝つこと。明日からもっと頑張って最終的に(チームが)1位で終わりたい」。本塁打王3度のキング大本命。「60発超え」と「96敗からの下克上」という偉業達成に挑む。【浜本卓也】