支配下選手登録からわずか2日で1日の西武戦(メットライフドーム)に先発したソフトバンク大竹耕太郎投手(23)が大仕事をやってのけた。強力西武打線を相手に堂々の8回2失点。育成出身の新人として史上初となる初登板初勝利を飾った。先発投手の駒不足に悩むソフトバンクに孝行息子が現れた。

 6連勝中の首位西武打線を技で抑えた。大竹が育成出身の新人で初の初登板先発初勝利。このカード3連敗なら自力Vが消滅するピンチを救った。初回、山川に左翼へ特大の先制28号2ランを浴びた。「これが1軍かという打球でくじけそうになった」。だが、済々黌で甲子園を沸かせ、早大で左腕エースとして大舞台を重ねてきた大竹は動じなかった。楽天辛島、塩見の緩急を生かした投球を参考に最速142キロの直球とチェンジアップ、スライダー、カーブと低めに集め2回から8回まで「0」を並べた。

 「一番は中村さんを直球で三振に奪ったところですね。変化球投手ですが直球で押せた」と7回に中村から空振り三振に奪ったシーンを振り返った。チームはこの日の先発投手選びに苦しんだ。右肩痛の東浜が間に合わず、新外国人ミランダも状態が上がらない。2軍で8勝0敗の育成ドラフト4位ルーキー大竹を補強期限ギリギリの7月30日(発表は29日)に支配下契約し、先発を託した。7月25日のウエスタン・リーグ広島戦を視察した倉野投手統括コーチは「大竹の直球はベース板のところで伸びるしキレがある。(先発候補の中で)一番安定していた」と抜てきの理由を明かした。

 12点差あったが9回は交代。工藤監督は「球数が今まで最高でも95、96球ということだったので(103球の)8回で代えた。いいところで代えてあげたいというのもあった。期待以上です。次も先発で投げてもらいます」と大絶賛。ウイニングボールを手渡し大竹の頭をなでた。

 小さいころからホークスファン。背番号「10」で初勝利。「本当は夢の中じゃないかと思うことがある。(移動の)飛行機の隣に千賀さんが座っていたり。起きたら寮のベッドじゃないかと」と、笑う。自身のツイッターにアップした中学の卒業文集には未来の自分の人生を書いている。「早大→ソフトバンクにドラフト3位で入団→25歳で1軍に上がる」。入団は「育成」だったが、1年目23歳で1軍に上がり1勝を挙げた。大竹は「(文集より)早かったですね」と笑った。夢をかなえた左腕の物語はまだ始まったばかりだ。【石橋隆雄】

<大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)>

 ◆生まれ 1995年(平7)6月29日、熊本県生まれ。

 ◆高校時代 済々黌では1年夏からベンチ入り。2年夏と3年春に甲子園出場。2年夏は2回戦で鳴門相手に1失点完投勝利。3回戦では大阪桐蔭に敗れたが、粘投で接戦を演じた。3年春は2回戦で常総学院を完封。

 ◆大学時代 早大に進学し、1年からメンバー入り。2年時はエースとしてリーグ戦春秋連覇、全日本大学選手権優勝に貢献。だが3年以降はけがに悩まされた。

 ◆プロ入り後 17年育成ドラフト4位でソフトバンク入団。2軍で8勝0敗1セーブ、防御率1・87の好成績を残し7月30日に支配下登録された。

 ◆サイズ 184センチ、78キロ。左投げ左打ち。