広島新井貴浩内野手(41)が、DeNA戦で意地の一打を放った。8回に代打で1点差に迫る右前適時打。今季限りの現役引退を5日に発表後、本拠地では初の安打&打点をマークした。反撃及ばず3試合連続の1点差負け。3シーズンぶり6連敗で優勝マジックも「9」で足踏みとなったが、千両役者がマツダスタジアムを沸かせた。

変化球を頭に入れながらも、低めの強い速球に負けなかった。新井は2ストライクから3球勝負に来た三上の150キロ直球をはじき返した。ライナーが右前ではずみ、二塁走者の西川が生還。1点差に追い上げた。ベテランの一打に、スタンドのムードは最高潮。逆転勝利の期待感が大きく膨らんだ。

「追い込まれていたんで、何とか食らいついていこうと思った。何とかしたかった。うまくコンタクトできた」

それでも競り負けての敗戦。大粒の汗を流しながら、悔しそうに振り返った。5日に今季限りでユニホームを脱ぐと発表。8日の敵地での中日戦(ナゴヤドーム)ではスタメン出場して、安打と犠飛による打点をマークした。ホームでは初の安打と打点。通算2202安打、1301打点はともに現役トップだ。

引退発表後も、常に全力の姿は変わらない。代走を送られると、ベンチでナインを鼓舞。続くチャンスに野間がファウルで粘るたび、拍手して声を出した。そして、自らを後押ししてくれたファンには「いつもだけど、声援をいただいてありがたい」と感謝した。

チームは3年ぶり6連敗。マジックは9のままとなった。それでも2位以下を大きく引き離し、焦る状況ではない。球場のビールかけ会場の準備は着々と進んでいる。自身の引退記念グッズも発売されることが決まった。

「今日は終わった。明日も試合がある。しっかり反省するところはして、前を見てやるだけ」

先発でも代打でも、任された場所で結果を残す。これまでやってきた仕事を、どんな状況でも貫くだけだ。【大池和幸】